子供たちに伝えたい “日本の夏”の美しいモノ・コト|べっぴん塾

第三十三回

子供たちに伝えたい
“日本の夏”の美しいモノ・コト



日本が誇る高次の情緒。その感性は、〟美しいもの”が身近に存在すること、そしてその〟美”を「美しいね」「嬉しいね」「ありがたいね」と子供と共に愛でることから育まれると考えています。夏も多くの美しいモノやコトに溢れています。この季節もまた子供達と一緒に「嬉しいね」「ありがたいね」と感動すべく、〟日本の夏”の美しいモノ・コトをお伝えしに幼稚園にうかがっています。

夏の旬の食べ物を伝えつつ、見えていないところにある美しさ〟人のご尽力”をお伝えします。
「トマトもキュウリも今は一年中食べることができますが、夏のお野菜なので、昔は夏にしか食べることができませんでした。農家さんたちが頑張って、色々と工夫をなさって下さって、今は冬でも食べることができます。嬉しいですね。有り難いですね。」

日本の夏の訪れを知らせる魚と言えば、鮎。夏の代表的な川魚で、夏の季語にもなっています。そのことを子供達にお伝えする時は、日本の伝統漁法〟鵜飼”についてもお伝えします。皆様は〟鵜飼”をご存知でしょうか。水鳥の鵜に鮎などの魚を捕ってきてもらう漁法で、その歴史は1300年以上。日本最古の歴史書「古事記」にも鵜飼に関する記述が見られますし、それ以前の時代の古墳からも鵜飼を表現していると考えられる埴輪が出土しています。特に岐阜県の長良川の御料場で行われる鵜飼は、日本で唯一の皇室御用の鵜飼(御料鵜飼)で、鵜匠は宮内庁に所属(宮内庁式部職鵜匠)し、代々世襲で伝統を守り続けてくださっています。鵜飼は、鵜が「お仕事したくないよ」と言って漁をしてくれなければ成立せず、鵜と鵜匠の信頼関係によって成り立っています。鵜匠は鵜を「家族」や「相棒」とおっしゃいます。鵜は、老齢となり引退をしても鵜匠と共に暮らし、亡くなると大切に弔われます。鵜飼が今も絶えずに人々を魅了するのは、大好きな鵜匠さんの為に頑張る鵜さんの健気な姿に心を打たれるからではないでしょうか。

 

(8/1/2025)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

 

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