古事記に由来する 日本の「恥」の文化|べっぴん塾

第二十五回

古事記に由来する
日本の「恥」の文化

先週はなぜ日本人は箸を家族で共有せず、自分だけの箸を持つのか、その理由を日本の歴史書「古事記」から読み解きました。息や唾液によって、他の物に人の魂をうつすという、日本の信仰。以前は、口に入った魚の骨や、果物の種などもお皿に残すことはせず、懐紙に包んで持ち帰っていました。魂をその場に残さない、かつ、食べ終わった後のお皿が美しいという配慮。今は、口から出した物を持ち帰る人はほとんど居なくなりましたが、美しい日本のマナーとして子どもたちに伝えたいと思います。

魂が宿った箸の話とは逆の活用法として、「お屠蘇事」があります。お正月に、家族全員で「お屠蘇」という薬酒を飲み、一年の無病息災を祈ります。その時に使用する盃は家族で使い回します。お屠蘇は、地域やご家庭によっては年長者から飲む場合がありますが、一般的に年少者から飲みます。若い人が先に盃に口を付けて魂を宿らせ、その盃を他の人も使うことによって、若いエネルギーを体内に取り込むことができると考えられています。「屠」は「邪気を祓う」、「蘇」は「魂をよみがえらせる」という意味。薬酒と若いエネルギーで邪気を祓い、魂をパワーアップさせて、新たな一年を始めるのです。

日本の「恥」の文化も古事記に由来しているといわれています。アマテラスの父神イザナギと母神イザナミは多くの神を生みますが、火の神を生んだ時、イザナミは大火傷をして死者が住む黄泉の国へと旅立ちます。イザナギは黄泉の国までイザナミを迎えに行くのですが、そこで、見ないでと言われていた、イザナミの腐敗し美しくなくなってしまった姿を見てしまいます。イザナミは恥をかかされたことを怒り、大変な災いを人間にもたらすことになります。そのようなことから「人に恥をかかせると大変なことが起こる!」と考えるようになったと伝わっています。
日本の始まりの話「古事記」にご興味をお持ちいただけましたら嬉しく思います。

(6/13/2025)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

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