州都サクラメントでの銃乱射事件、死傷者多数 =続くアメリカの宿痾GV=

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アメリカ101 第129回

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「エーッ!ウクライナだって。違うよ。注意を払うべきは、アメリカ国内での殺戮だよ」(Ukraine?Pay attention to the killing at home)というのは、カリフォルニア州の州都サクラメント市内の繁華街で4月3日(日)未明、100発以上の銃弾が飛び交った銃撃で20人近くの死傷者が出た大量殺傷事件(massacre)に関する同5日付けロサンゼルス・タイムズ紙の読者投書欄の見出しです。   ロシア軍の侵攻作戦で荒廃が続くウクライナでは、民間人多数が戦闘に巻き込まれて死亡するだけでなく、4月に入ってからはロシア軍部隊の占拠下にあった首都キーウ(キエフ)郊外のブチャで多数の民間人の遺体が見付かるなど、ロシア軍による組織的な民間人殺戮が国際的な批判を浴びています。対ロシア批判の急先鋒がジョー・バイデン大統領ですが、その膝元のアメリカでは、銃撃殺傷事件(gun violence=GV)が急増する皮肉な状況になっています。

 

日曜日午前2時過ぎという週末深夜に発生したサクラメントでの銃撃事件は、新型コロナ感染禍でのさまざまな規制が緩和されたのを受けて、多数の市民が繰り出していた同市最大のレストラン、ナイトクラブ、バーなどが立ち並ぶ繁華街の一角で発生しました。カリフォルニア州議会議事堂から数ブロックのところにあり、閉店で顧客が街角に集まった際に、突然銃弾が飛び交うとい修羅場で、6人が死亡、12人が重軽傷を負うという犯罪事件現場となりました。地元警察によると、3棟のビルや自動車3台に銃弾が命中、現場一帯には約100個の薬きょうが散乱していました。地元テレビ局の現場ビデオの分析では、発砲音は1分間で76回にのぼったとのことで、自動小銃が使われたものとみられています。

 

地元警察は、5日までに事件に関与したとして、暴行と銃器不法保持の疑いで2人を逮捕するなど、捜査を進めているもの、全容解明には至っておらず、事件の経緯などは明らかでありません。サクラメントでは1カ月前にも、父親が3人のこどもを銃殺する事件もあり、今回の同市最悪のGVで市民に衝撃を与えています。カリフォルニア州は、GV防止に向けた法律整備に力を入れており、さまざまな銃規制法が107も施行されているという厳しい銃規制を敷いているものの、GVを防ぐには至っていません。

 

「GV大国アメリカ」を示す恐ろしい統計があります。全米でのGVを毎日集計・発表している民間団体「GVアーカイブ」があるのですが、サクラメントでの銃撃事件のあった4月3日一日だけで、全米各地で殺人、自殺、偶発事故といったGVが少なくとも95件報告されており、死者36人、負傷者96人が出ています。そしてGVによる年間死者数(自殺は除く)は、2018年の1万4900件から2020年の1万9411件まで増加傾向にあります。そして懸念されるのが、サクラメント事件のように一つのGVで「5人以上の死者」が出る大量殺人事件の増加で、今年はすでに5件が記録され、うち3件がカリフォルニア州です。

 

GVの増加は、新型コロナウイルス禍を背景とした銃器販売数の増加と関連しています。2020年には過去最高の2280万丁を記録。昨年も1990万丁と高留まりです。そして近年の新たな懸念材料は、ghost gun(幽霊銃器)の存在です。既存メーカー製銃器には登録番号が割り当てられており、GVなどで使用された場合の有力な追跡捜査の手掛かりとなるのですが、部品を組み立てた手製の幽霊銃器には公的な記録がなく、事件解明が困難だからです。サクラメントでの銃撃事件後、バイデンやギャビン・ニューサム州知事は例によって銃規制の一段の強化を訴えましたが、国民の間での警察などの治安機関への信頼度が低下している現状では、悲しいことながらGVはアメリカの“宿痾”(しゅくあ)であり続けるでしょう。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(4/5/2021)

 

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