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第五十七回
日本の国が始まって以来続く
二つの天皇のお仕事
日本の国が始まって以来続いている天皇のお仕事は二つ。一つは、国民の幸せと世界の平和を神々にお祈りなさること。もう一つは和歌の伝統を継がれること。法律で定められている国事行為のように、メディア等にはほとんど映らないお仕事なので、ご存知ない方も多いのですが、建国からずっと続いているお仕事はこちらの二つなのです。
一つ目の日本の祭主としてのお仕事「宮中祭祀」は、主に皇居の宮中三殿で行われ、その数は年間24回程とお聞きしています。
一年の最初の宮中祭祀は、元日早朝になさる「四方拝」です。神嘉殿(宮中三殿の西側にたつお建物)の南庭、つまり野外で行われます。庭には白い砂が敷かれ、その上に白い布を敷き、さらに荒薦と真薦、その上に三尺四方の厚畳が置かれます。その周りを二双の屏風で円を描くように囲み、西南の方角が少しだけ開かれます。この開いているところは、伊勢神宮の方角です。天皇陛下は四時頃にお起きになってご潔斎を済まされ、平安朝のご装束(黄櫨染御袍)をお召しになり、午前五時三十分に庭にお出になります。そして、屏風の中にお入りになり、ご拝座の上にお上がりになって、まず伊勢神宮の方(西南)に向かって拝礼をなさいます。ここでの拝礼は「両段再拝」という、立って拝礼をされた後、座って拝礼、再び立って拝礼、また座って拝礼をなさるという大変体力を要する作法で行われます。それを右回りに四方に向かって、四回繰り返されます。
日本のお正月は一年の中でも最も寒い時期にあたります。しかも日の出前の早朝。もちろん暖を取る物はありません。
昭和天皇はお隠れになる二年前まで四方拝をなさっていらっしゃいました。八十歳をゆうに越された天皇が、寒風の吹く野外で国民の幸せをお祈りになる。四方拝に始まる新年の迎え方は千年以上昔から今もずっと変わっていません。眠っている間に幸せが祈られている。なんと幸せな年の始まりかと有難い気持ちでいっぱいになります。

(1/14/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com
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