お椀と箸、先に取り上げるのはどちら? 和食の美しい所作|べっぴん塾

第三十二回

お椀と箸、先に取り上げるのはどちら?
和食の美しい所作

和食では、基本、器を持って食事をします。そうすると、美しい姿勢で食事をとることができます。昔は膳(料理をのせて供する台)が低かったので、そうせねば食べ難く、また、尊いものを日本では高く持つことで敬意を表現してきたことから、命への敬意として器を持ち上げる作法となったともいわれています。

ここで皆様に質問です。和食では、箸と器の両方を持ちますが、どちらを先に取り上げるでしょうか。正解は、器です。箸を先に持つと、どうしても器は片手で取り上げることになってしまいます。器の中の尊い命を片手で持つようなことはできない!という思いから、先に器を両手で優しく持ち上げ、それから箸を取ります。その所作を続けていると、「命とは両手で持つような大切なもの」と自然と感じることができます。命の大切さを所作からも子どもたちは学ぶのです。

器を両手で優しく持ち上げた後は片手となりますが、しっかりと利き手でない方の手に据えます。親指を器の淵にかけ、他の指は揃えて器の糸底にかけて持ちます。
器をしっかりと利き手と反対の手に持ちましたら、利き手を器から外し、箸をとります。
箸は上から取ります。そして、糸底にかけたいずれかの指に挟み、利き手の手のひらを反して上に向け、箸を持ちます。そうすると、自然な美しい所作で器と箸を持つことができます。
置くときは逆の流れで置きます。

美しい箸の持ち方のポイントは、中指の位置です。上の箸は、ペンの持ち方(親指と人差し指、中指でつまむように持つ)と同じですので、中指は上の箸の下。中指の爪の横に上の箸を当てます。下の箸は親指の付け根と薬指の指先に乗せますので、薬指は下の箸を下から支えています。箸は上の箸だけを動かして使います。

食事の仕方は、存外人に見られているもの。日本では、器や箸の持ち方はよく見られています。皆様は美しく持てていらっしゃいますか。

(7/17/2025)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

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