「トランプ関税」で世界が大揺れ! いま知っておきたい超基本

筆者・志村 朋哉

南カリフォルニアを拠点に活動する日米バイリンガルジャーナリスト。オレンジ・カウンティ・レジスターなど、米地方紙に10年間勤務し、政治・経済からスポーツまで幅広く取材。大谷翔平のメジャー移籍後は、米メディアで唯一の大谷番記者を務めた。現在はフリーとして、日本メディアへの寄稿やテレビ出演を行い、深い分析とわかりやすい解説でアメリカの実情を日本に伝える。

通信024
「トランプ関税」で世界が大揺れ!
いま知っておきたい超基本

トランプ大統領が打ち出した大規模な関税政策が、いま世界中を揺るがせています。

企業への影響を懸念して、株価は世界的に下落。アメリカでは「モノが高くなる前に買っておこう」と、消費者が動き始めています。

今回の政策は、これまでの貿易のルールを根本から覆す内容で、その影響は私たちの生活にもじわじわと迫ってきています。

そもそも関税って何?

関税とは、外国からモノを輸入する際にかけられる税金のことです。たとえば100ドルのスマートフォンに20%の関税がかかれば、アメリカの企業は120ドルを支払うことになります。

トランプ大統領は「アメリカ第一主義」を掲げ、「他国から安い製品が入ってくると、国内の工場が潰れて雇用が失われる」と主張。だからこそ、外国製品に関税をかけ、アメリカ製品が売れやすい環境をつくろうとしているのです。また、企業にとっては、海外ではなく国内で製造する動機づけになります。

トランプ氏は、これまでも特定の国や商品に関税をかけてきましたが、今回は桁違いです。4月2日の演説で、カナダ・メキシコを除くほぼすべての輸入品に一律10%の課税をすると発表しました。「他国は不公平なやり方でアメリカを利用してきた」と述べ、アメリカの企業や労働者にとって「解放の日」だと呼びました。

さらに、貿易赤字の大きい約60か国には、追加で1~40%の関税が上乗せされます。たとえば、カンボジアには49%、ベトナム46%、中国34%、日本には24%が課されます。

誰が負担するの?

誤解されがちですが、「中国に関税をかける」といっても、中国の政府や企業が払うわけではありません。実際に税金を支払うのは、輸入するアメリカの会社です。なので、たとえばウォルマートが中国製のテレビを仕入れるときに関税がかかると、その分だけ仕入れコストが上がります。ウォルマートは、自分たちの儲けを減らすか、中国の工場に値下げをお願いするかもしれませんが、それが難しい場合は、店頭価格に上乗せして、お客さんに負担してもらうことになります。

今回の関税で、アジアで作られた衣類や家電など、私たちの身近なモノの値段が上がる可能性が高まっています。アメリカ国内の工場でも、部品を国外から仕入れている場合はコストが増え、逆に打撃を受けることもあるのです。

世界はどう動く?

他国も黙ってはいません。アメリカが関税をかければ、相手国もアメリカ製品に関税をかけ返して、世界的な「貿易戦争」へと発展する可能性もあります。そうなれば物価が上がり、人々の消費が冷え込み、景気が悪化することも考えられます。

また、アメリカは信頼を失い、日本やヨーロッパなどの同盟国との関係が悪化する可能性も出てきます。国によっては「中国やロシアと手を組もう」と動くところも出てくるかもしれません。

トランプ氏は1期目でも関税を交渉の武器にしてきましたが、今回は想像以上にスケールが大きく驚きました。経済指標に敏感だったはずのトランプ氏が、株価の下落にも動じず強行する姿勢からは、貿易の仕組みそのものを変えようという強い意志が感じられます。

アメリカの大統領が下す決定が、私たちの毎日の買い物や、財布の中身にまで影響する。それが、今回の「関税ショック」が突きつける現実です。

(4/9/2025)

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