湘南の伝説のサーファーに会った

鎌倉の家に居る時は、なるべく早く起き散歩するように心掛けている。自宅から七里ガ浜駅を通って国道134号線を歩くのがルーティンになっている。海沿いに出るとその日の波の様子が分かる。「いい波」波乗りがよく使う言葉だ。

その日、湘南の伝説のサーファーISHIIさん(77歳)のヴィンテージのホンダスーパーカブが稲村ケ崎公園に停めてあった。はるばる横須賀から、佐島、葉山、逗子、材木座、由比ガ浜を通って稲村ケ崎までやって来る。自ら針金で飾り着けしたBOXを積み、カスタムしたカブにショートボードをセット。持病のヘルニアの為、ボートのフィンも特別使用に改良してある。雨の日も波が良ければ、何時でもやって来る。行動は常に一人、群れを成さない、5~6本良い波と出会えると、横須賀に帰ってしまう。

そんな男が噂にならない訳がない。今までも、カブを公園で見かけるのだが、本人と遭遇する機会はなかなか難しい。なんたっていつも波の上に居るから。そんな距離感だが、やっと久しぶりに会えた。

こんな会話から始まる。「テリーさんお久しぶりです。会えて良かった。実は明日ヘルニアの手術なんですよ、その前に波に乗っておこうと思って。」にビックリ。普通なら手術前日なら家で静養するものだ。「家に居なくて平気なんですか。」にも「海に入ることがリハビリですから。」と涼しい顔で沖の波を見ている。さすが伝説の男。都会暮らしの軟な私とは気合が違う。サーファーと言うより、さすらい一匹狼の印象だが、シアトルで暮らしている娘さんに会いに行く国際的な一面も。ISHIIさんの人柄を知るエピソードがある。仲間のサーファーが亡くなった追悼式に稲村の海に向かいサックスで名曲『Amazing Grace』を奏で送った。

今、湘南のサーファーが高齢化していると言われているが、やっぱり海に入るのは楽しいし金も掛からない。ウエットスーツが有れば冬でもOK。海から上がれば、銭湯も日帰り温泉もある。美味いシラス丼も。レンタルサーフボード屋さんも充実している。サーフィンが上手に出来なくでもボードに乗って富士山を眺めているだけで良い気分になれる。鎌倉由比ガ浜であれば波も穏やかで初心者にもうってつけ。夏場には小学生向けのサーフィン教室も開催される。

話をISHIIさんに戻そう。立ち話で何故か気が合い、今月末横須賀での再会を約束。観光客が知らない穴場を案内してくれるらしい。彼の事だから飛び切り変なスポットに決まっているが、そこはさすらい男、お金の掛かるお店は案内するはずもない。どんな連中と出会えるのか。楽しみは尽きない!

 

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■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

 

 

 

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