【手記 ケース4】雇用主を相手取った訴訟の罠〈前編〉

 

ロサンゼルス在住 匿名Aさん(女性)

私は3日後にロサンゼルスから日本へ帰国します。取り返しがつかないことをしてしまい、おそらく二度とアメリカに来ることもできないでしょう。子どものころから夢だったアメリカ留学を2年もたたずに、あきらめなくてはいけない辛さはこのあと克服できないかもしれません。そんなどん底で落ち込んでいる私が何か他の人の役に立つことはないかと思い立ち、一人でも同じような目に遭う人が増えないよう、ここに匿名で投稿することにしました。

 

私はアメリカに来てまもなく、学校で許可されている時間内の仕事では生活費がまかなえないことに気づき、日本食のレストランでパートを始めました。英会話には慣れていなかったので、日本人のお客様が多く、チップがもらえたので助かりました。そのレストランでのパートを始めて間もなく、カウンターに座る常連のお客様と親しくなりました。いつもわりと暇な時間に来るので、共通の世間話をしたりしていました。そのお客様はいつもキャッシュで支払い、チップをたくさん置いてくれていました。最初はまったく気が付きませんでしたが、今思うとすべて事前に計画したことだったようです。

 

ある時、偶然このお客様と私の二人きりになった時、「あなたが働いているこのレストランはみんな長時間の仕事をさせられて、オーナーばかりが儲けて労働法違反しているから、私がオーナーに掛け合ってみんなに還元してもらえるようにしてあげるよ」と言って名刺をくれました。名刺を見ると弁護士事務所の方だったのです。確かに一緒に働いている年配のパートの人もいつも仕事がキツいと話していましたし、オーナーは忙しい時には言葉遣いも荒くなるし、労働条件は決して良くないなと感じていました。そこで、何か自分に改善できることがないだろうかと思い、名刺をくれた方の弁護士事務所へ連絡してみました。

 

弁護士事務所でまず言われたのは、「オーナーに労働法違反を指摘する通知を送付し、未払いのオーバータイム賃金等を請求すること」。さらに「一緒に働いている2~3人のスタッフにも声をかけて同調する仲間を探してほしい」とのことでした。また、その弁護士が言うには「通常オーナーは通知を受け取ると、すぐに違法を認めて示談金を支払ってくる」「オーナーから返事がなく、訴訟することになっても調停ですぐ和解金を支払ってくる」とのことでした。それと、弁護士費用については、成功報酬なので事前に支払う必要はないと言われ、契約書のような書類にサインしました。

 

そのようなうまい話に乗った私ですが、当時、英語はほとんど読めず、労働法もまったく知らず、成功報酬契約書の内容もまったく理解していなかったのです。そしてその後に起こったのは、最初に弁護士から聞いていた話をくつがえす一連の事柄でした。その事柄とは、私は一緒に働いていたスタッフ全員に集団訴訟をしようと勧誘たものの、結局誰も参加しなかったこと。また、私がオーナーと思っていた人は実は雇われマネージャーで、レストランは会社で経営されており、訴えられたとしても違法なことはしていないのでレストラン側は和解を考えていないこと、でした。

 

その間、弁護士は 裁判所へ資料を提出したり、専門家を雇ったり、通訳が立会ってレストランのマネージャーを二日間質問したりしていたようですが、本格的に訴訟になったら私は自分の雇用主を訴えた原告ですから、レストランにいづらくなって辞めました。しかし、さらに困ったのは、私が自分の働いているレストランを相手取って訴訟を起こしたウワサがコミュニティにも広まり、その後に働く先を見つけようとしても募集先でことごとく断られ、どこでも働くことができなくなったのです。

 

そんな状況下である日、弁護士からデポジション(deposition:相手方の当事者や第三者を、公証人の立ち会いの下で、宣誓させたうえで尋問し、証言を録取すること)をしなくてはいけないと言われました。デポジションするということは、レストラン側の弁護士が通訳立会いのもとで私に質問し、その記録は証拠として正式に裁判記録に残るのです。

 

(後編へつづく)


㊙️ザ・アメリカ生活  あの時何が起こった!?

長いアメリカ生活。生きていればあんな事やこんな事もあります。

今だから言えること、今でも言えないこと、今ここで告白します。

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