【手記 ケース6】カリフォルニアのザ・おとり捜査〈後編〉

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トーランス在住  T.Kさん(40代男性 飲食店勤務)

(前編より)

夏場になるとビーチ沿いのレストランやバーなどで厳しくなる州酒類管理局(California Department of Alcoholic Beverage Control)、通称ABCによる「21歳以下へのアルコール飲料の販売取り締まり」。10年前に私も店で21歳以下の若者にビールをサーブしてしまい、ABCおとり捜査で現行犯逮捕されました。裁判所に出廷して有罪判決を受けた時、待合所で同じようにおとり捜査で捕まったアメリカ人達に会いました。

 

巧妙なABCおとり捜査

一人は、コンビニのレジ係の男性でした。彼の話によると「僕は丁度その時一人でレジに立っていたんだけど、急にレジの前に長い列ができた。急いで会計を進めなきゃならない。普段なら丁寧に一人ひとりIDチェックをして酒を売るんだけど、あまりに急いでいたので、その中の若者にIDを聞かずに酒を売った。その瞬間に逮捕されたんだ。後でわかったんだけど、その時レジに並んでいた人のほとんどがABCのおとり捜査官だった」

裁判所で会ったもう一人は、日曜の昼間にリカーストアの前で逮捕されたそうです。「俺は店の前にいた一人の若者に『お金を渡すから6パックのビールを買ってほしい』って頼まれたんだ。最初断ったんだよ。でも、あまりにしつこく頼んでくるし、確かに俺も若いころ大人に金を渡して酒を買ってもらったことがあった。それで彼にビールを買ってやった瞬間に逮捕。その若者は21歳以下で、軽犯罪で捕まった罪を司法取引でチャラにしてもらうためにオトリになってたのさ」。私はその二人の話を聞いて、ABCおとり捜査の巧妙さに恐怖を感じました。

 

一生残る前科

ABCおとり捜査で有罪判決を受け、10年以上が経った時です。トランプ大統領が就任した直後で、入国審査が厳しくなるとの噂が流れていました。私は日本へ一時帰国した帰りにLAX空港で入国審査に引っかかり、初めてAdmissibility Review Area 1、俗に言う「別室」へ連れていかれました。扉は出入りの度に厳重にロックされています。審査官は「なぜここへ連れてこられたか分かる? 君には、未成年にアルコールを提供した前科があるよね」。私は、おとり捜査で逮捕された時の状況を詳しく説明しました。審査官がたまたま日系人だった事も幸いし、何とか入国させてもらいました。なぜ10年以上も経って・・・と思いましたが、れっきとした前科であり、当局には、犯罪歴は一生涯記録として残っているのです。

 

21歳以下にアルコールは絶対ダメ

ABCおとり捜査で痛い目をみた私ですが、「未成年にお酒を売ってはいけない」とは常々思っていました。大人であれば自分で酒量をコントロールできるでしょう。しかし、もし私がお酒を提供した未成年が、酔っ払い運転をして誰かをひき殺してしまったら?  最悪の場合、億単位の損害賠償を請求されるのは、未成年にお酒を渡した私であり、未然に防げた事故で身内を亡くした、悲しむ遺族をまたも増やすことになります。未成年者には絶対にお酒を提供してはいけないのです。

 

先日も、知り合いの女性が日系スーパーマーケットの前でABCおとり捜査で逮捕されました。21歳以下の若者にしつこく頼まれ、お酒を買ってあげたら捕まり、これから裁判だそうです。アルコールを取り扱う店だけではなく、一般消費者もABCおとり捜査のターゲットにされますので、十分にご注意ください。

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