【手記 ケース1】DUI : 刑務所暮らしを強いる実刑判決〈後編〉

トーランス在住 S.Gさん(男性)

自分が収監されたのはSupermaxと言う凶悪犯罪者や重犯罪の未決囚を主に収容する巨大施設であり、収容者数約7000名(当時日本人は私1人であった)。大きく区分けされたドーム状の部屋に7~80人が入る。鉄製の2段ベッドの真ん中に無理矢理ベッドを取り付けた3段ベッドに寝るのだが、下のベッドの人は身動きさえままならない。日々は、食べること寝ること以外はほとんどやることがない。せいぜい出所後に備えて体を鍛えるくらいだ。お菓子や日用品等の購入もできるが、現金は使えないので預けてあるお金の中から引き落とされる。

 

(前編 9月6日号より)

では、お金のない人たちはどうするのかというと、各々の得意分野を生かして商売をするのだが、絵心のあるものは便せんなどに、タトゥーを入れる図柄やイラストなどを書いて売る。中には、刑務所で支給されるシャツやパンツ、靴下などの備品を使って工芸品を作る人も。シャツの糸を一本ずつ解きほぐして取り出しそれをベッドの端などにくくりつけて他の糸と寄り合わせて紡いでできた丈夫な糸で、編み糸を作り、それを編み込んでネックレスや指輪、飾り物などの素晴らしい工芸品が完成する。それを購買日に、1~5ドルくらいで売る。買いたい人はどうやって支払うかというと、刑務所内での通貨代りとなるのがなんと購買することのできる袋のインスタントラーメン(主には、マルちゃんラーメンのスパイシービーフなどが人気)1袋がだいたい1ドルという価値基準である。

 

刑務所内でなんと酒を密造する人もいた。食事時に出るフルーツやジャム、ジュースなどを混ぜ合わせ発酵させて酒を作るのだが、これがなかなかうまかった。しかしある日、酒を精製する方法を知ってからは飲む気が失せた。というのも、フルーツやジャムなどを発酵させたものをろ過するために、なんと!靴下に入れてそれを絞っていたのだ。うわぁ〜である。

 

自分の刑務所内での立ち位置や分類のされ方として、大まかにはヒスパニック、白人、黒人の分類で分けられる。その中で、日本人である私はアザー(その他)である。それにより、食事をする場所やシャワーやトイレなども徹底した区分けがされ、それぞれの縄張りがあり(それを仕切るボスもいる)、それを犯せばリンチの対象ともなる。ここはやっぱり凶悪刑務所なのだと思い知らされる。

 

そんな刑務所で自分はあることをきっかけに先生をすることとなった。自分が若い頃にたしなんだ日本の武道の稽古の基礎練習をしていたときのこと。「それは何だ?」と、興味を示してきた人がいたので説明した。

「君たちはナイフやガンを用いて誰かをあやめたり、傷つけ怪我をさせたりしてここに来た人も多いと思うが、自分たちはこの指1本で相手を倒せる

例えば『秘孔』と呼ぶ急所をつけばその瞬間は大したことがなくても数週間後、数ヶ月、あるいは数年後にはそこから神経が麻痺して腐ってきて終いには死に至ることもあるのだ。さらには武器を用いない暗殺技術なので証拠すら残らないんだ」と、まるで漫画の北斗の拳のような話をした。まるっきり嘘ではないが、まぁ八割方ブラフであるのは間違いない。

自分では冗談のつもりだったのだが、翌朝に10人余りの人間が手に手に朝食のバナナやりんごを持ってきて、弟子にしてくれ、俺にも教えてくれと人種関係なく人々が殺到。刑務所の中で一風変った稽古事を展開したのだった。

おかげでどのグループにも属さないアザーだった自分も、一目置かれることとなった。

 

とはいえ、70人余りの荒くれが暮らす房内はほぼ24時間唸りがするほどの騒音が絶え間なく続き安眠できることはまず無いし、常に何らかの危険にさらされている。やはり刑務所は刑務所、顔面や全身に地肌が見えないほどのタトゥーの入った輩がひしめき、1分1秒でも早くここから出たい解放されたいという数ヶ月を過ごした。

 

書けばきりがないのですが、全ては本当に経験したことであり、読んでいただいた皆様には、私の失敗話を他山の石としていただけたらと思います。飲酒運転は他者に対する危険をも伴いますし、万が一、捕まりかけたときには、ゆめゆめ逃げようなどとは思う事無かれ、と願います。

●上写真/刑務所内で買った工芸品のネックレスと指輪。備品(シャツや下着)の糸を一本ずつ解きほぐして編んで作られたもの。

 


㊙️ザ・アメリカ生活  あの時何が起こった!?

長いアメリカ生活。生きていればあんな事やこんな事もあります。

今だから言えること、今でも言えないこと、今ここで告白します。

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