100マイルの道も一歩から | 23㍄(37㎞)地点・ サクラメントに程近いフォルソム湖

Nick Dの冒険大陸

Vol.9 ▶︎23㍄(37㎞)地点。ハロウィーンパーティー会場

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ウルトラマラソン参加は今回が初めてではない。過去に、50㎞、100㎞を幾度となく完走している。トレーニングでフルマラソン以上の距離を走る事も珍しくない。一方で、これまでのレースの制限時間は100㎞ウルトラで20時間、アイアンマンでも17時間。今回の30時間と比較するとかなり短い。昼夜走り続けるには、栄養補給と眠気対策が極めて重要になってくる。この半年間、不安を払拭するために、課題を明確にして、地道なトレーニングを積んできた。”Train hard and enjoy the race” レース当日は思う存分楽しむ事を信条としている。 サクラメントに程近いフォルソム湖。ヘッドランプを装着してスタートしたのは、まだ肌寒い午前5時。スタートからの18マイル(29㎞)は、平坦なロードとトレイルの混ざったコース。自然と上がるスピードを抑えるのに苦労した。先は長い、ここで無理をする必要は全くない。
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カラカラに乾燥した平原。トレイルはバイクが止まらずにすれ違えるほどの幅はない
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12マイルあたりで、一人の日本人ランナーに会った。おそらく私を除くと唯一の日本人だろう。全身スタイリッシュなパタゴニアのウェアーで格好よく決めている。話をすると、日本から出張できたビジネスマン。仕事を終えて100マイルレースに挑んでいるという。出張を利用して海外のマラソンに参加するビジネスマンには会ったことがあるが、流石に100マイルは聞いたことがない。更には、突然出張が決まったので、今回のレースへの準備期間はなんと一か月。凄まじい。幸いにも、友人がペイサーを買って出てくれて、日本から駆けつけて来たとの事。 よくよく話を聞くと、パタゴニアで仕事をしており、今回の渡米もベンチュラにあるパタゴニア本社への出張。この機会を利用して100マイルレースに参加する事を会社に告げると、快く送り出してくれたとの事。さすがパタゴニアとそのエグゼクティブと唸らされた。 しばし並走しながら歓談の後、お互いの幸運を祈り、それぞれの途へ着いた。ちなみに、このパタゴニア・ハードコア・ランナー、僅か一か月のトレーニングで見事に素晴らしいタイムで完走している。更に驚くことに、日本から遠路駆けつけてくれた友人ペイサーとは、何とプロトレイルランナーの石川弘樹さんである事が、後になって分かった。 ペースを抑えて湖畔の18マイル・ループを回り、最初のチェックポイントであるスタート地点に戻ってきたのは、約3時間半後の8時半。すでに日は昇っており気温が上がっている。ボランティアが、事前に預けておいたドロップバッグを持ってきてくれた。長袖のレイヤーを一枚脱ぎ、バッグに戻す。粉末のテイル・ウィンドなるスポーツドリンクを二袋、ハニーストリンガーワッフルを二つ、ジェル二つを取り出しベストのポケットに押し込み、再び走り始める。次のドロップバッグまでは17マイル。ここからが本番である。
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ハロウィンの飾りつけでお祭りムード。オレンジ色のテーブルクロスの上に、ピーナツバター・サンドイッチやポテトチップスが並ぶ。
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2度目のスタート地点を後にし、湖の反対岸に渡る堤防を越えると、シングルトラックの本格的なトレイルの始まりだ。緑の生い茂ったしっとりとした空気が漂う森と、カラカラに乾燥した丘陵が交互に姿を現す。 一人がようやく走れるほどの幅のシングル・トレイルが続く中、時折マウンテンバイクの一行と遭遇する。多くの場合、トレイル上では、バイカーとランナーはあまり仲が良くないが、ここでは異なるようだ。人気のルートらしく、多くのグループと行き違うが、皆道を譲ってくれる。礼を言い、バイカー達の横を足早に駆け抜ける。 23マイル(37㎞)地点にあるエイドステーションは、ハロウィーンの飾りつけでお祭りムードである。オレンジ色のテーブルクロスの上に、お決まりのピーナツバター・サンドイッチや、ポテトチップスが並ぶ。テントの屋根からはクモの巣が垂れ下がっているが、昼間のためホラーっぽさは微塵もない。ボランティアは皆一応にハッピーだ。少しばかりの食料と、沢山の声援を受けて、上機嫌でエイドステーションを後にした。
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(4/27/2022)


 

Nick D (ニックディー)

コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈け回る毎日。「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。

http://nick-d.blog.jp

 


 

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