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Vol.46 ▶︎汚水処理が夫婦円満の秘訣なの?
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大惨事にならないように、確実に理解しなければいけないのが、下水用タンクの容量が上水用タンクよりも小さいという事。よって、78リットルのタンク満タンの水を、シャワーや皿洗いで全て使い切ると、64リットルのグレイ・ウォーターの下水タンクの容量をオーバーする。即ち、キャンピングカー内が水浸しになる。今回の旅では、知らずに長いシャワーを浴びて、キャパオバーになったことが数回あった。 車内にマニュアルがあることは、ピックアップ時に教えてもらったので知っていたが、そんなものを読むはずがない。マヌケな初心者は、てっきり故障か欠陥だろうだと思った。得意げに、返却時に文句を言って、レンタル料を割り引いてもらおうと、浅はかなことを考えていた。ちなみに、この上・下水用のタンクのキャパは車両によって容量は異なるが、上水より下水タンクの方が小さいのは一律の様だ。 無知を誇るかのように、ジャブジャブと使ったシャワーの水は、ユニットバス内に幼児用プールの様に溜まった。幸いにも寸前のところで気が付き、車内が浸水することはなかった。一方、プール騒動が起こるたびに(恥ずかしながら、一度だけではなく何度も起きた)、コップで水をすくい、便器に流す作業を行った。その“ダーティー・ジョブ”を担ったのが誰であるかは言うまでもない。夫婦間のパワーバランスだ。 念のため言っておくが、トイレは殆ど使っていなかったので、ブラック・ウォーターのタンクがキャパオーバーになって、後始末を余儀なくされる事はなかった。そんな事が起これば本当の一大事だ。車内は汚臭で満たされ、夫婦間で、お前のせいだと互いを責める。夫婦存続の危機を迎えることなりかねない。
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そんな大惨事を回避するためのツールがある。車両後部に設置されているコントロール・パネルだ。この便利な装置は、ジェネレーターのスイッチ、温水器のスイッチ、さらには水の残量、そして極めて重要なブラック・グレイ双方のタンクの空きスペースを表示してくれる。これがあれば大惨事は避けられる。と思いきや、今回、私たち夫婦に貸与された、その究極のツールは、機能不全に陥っていた。 その役立たずのパネルであるが、壊れていたのは、厄介なことにグレイ・ウォーター用の表示。タンクのキャパを示すランプが常時赤く灯っている。つまりタンクが空なのか、一杯なのか全くわからない。最悪の事態を避けるべく、ブラック・ウォーター、グレイ・ウォーター双方の排出を頻繁に行った。お陰で、始めはかなり及び腰だった汚水処理だが、一週間の旅が終わることろには、すっかり達人になっていた。
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キャンプ場に備えて受けのホースでタンクに水を入れる。
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車体下の排水口にホースを繋ぎ、左下にある銅色の蓋を開けて “Sh*t” を流し込む。
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”Sh*t” 処理の達人では何ら自慢にもならないが、習得した技はというと・・・。 実際のところは、そんな大袈裟なものではなく、慣れればどうってことない作業だ。車に装備されている排出用のホースを所定の位置にねじ込んで、反対側を地面にある穴に差し込む。この時あまり距離を開けない事。ホースが伸びていると、排出が始まった時に思わぬ動きをする可能性がある。そして、ホースの先端を不必要に奥まで突っ込まないこと。入れすぎると地下(いわゆる肥溜め)に溜まっている ”Sh*t” に先端が触れるかもしれない。実際、今回使ったホースは、先の方に乾いた茶色いモノが付着していた。浅すぎず、深すぎず。30センチくらい突っ込む。あとは、備え付けのレバーを引き排出を行うのみ。先ずは黒いレバー。これで、固形物が出てゆく。黒いレバーを元に戻した後で、グレーのレバーを引く。大量の水が放出され固形物をきれいさっぱり流してくれるという仕組みだ。とても良く出来ている。 ちなみに家内は、いつも少し離れたところから、何か面白いこと起こらないかなぁ、と楽しそうにビデオを撮っていた。幸いというか、残念というか、優秀なダーティージ・ョブの担い手がいたため、毎回、期待外れに終わったのは言うまでもない。 排出をした後に忘れてはならないのが、ホースを所定の位置に戻して、しっかりロックをすること。走行中にホースを落としてしまったら大変だ。
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(1/17/2023)
Nick D (ニックディー)
コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈け回る毎日。「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。