ベアー・トラップ・キャニオン:「クマ捕獲用の罠」を目指す

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Vol.49 ▶︎生涯、一度は走りたい! バケットリストの下見

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ラヴァーキン川を離れ1キロほど、ゴロゴロとした岩や倒木が散乱するトレイルを上った先に、コロブアーチのビューポイントはあった。時刻は9時少し前。生い茂る木々の間からアーチが見える。その幅87.5m。世界で二番目の規模を誇るアーチと言われているが、距離が離れているせいか、今一つ規模感が掴めない。かつては世界第一位と言われていたが、その後の測量で一位の座をアーチーズ国立公園のランドスケープ・アーチに譲っている。 世界一位、二位かはさておき、視界の先に架かるアーチ。残念ながら今一つ迫力に欠ける。距離も然ることながら、その形状。更にはアーチ越しに背景の空が見えないのがその理由だと思われる。アーチーズ国立公園のデリケートアーチやダブルアーチに後塵を拝していることは多くが認めるところだろう。 ザイオン・トラバースと呼ばれるザイオン国立公園を縦断する、全長78キロのルートがある。大のザイオン好きの私としては、一度は走ってみたいと思っている。所謂、バケットリストと言うやつだ。 ザイオンの西端から始まるラヴァーキン・クリーク・トレイル。コロブ・アーチへの分岐点の数百メートル先でホップ・バレー・トレイルと合流する。ホップ・バレーを南下するルートは、ワイルドキャット・キャニオン・トレイル、続いてウェストリム・トレイルを介して、多くの観光客が訪れるザイオン・キャニオンへと続く。その後、イーストリム・トレイルを経て東側のエントランスまで続く。まさにザイオンを東西に貫く縦断ルートだ。

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巨大なコロブアーチ。望遠の撮影を試みたが、巨大さが伝わるだろうか

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今回のコロブ・キャニオン訪問はザイオン・トラバースの下見も兼ねている。ここまでルート表示、トレイルの整備状況、水補給場所などに気を配りながら走って来た。今のところ懸念材料はない。 ホップ・バレー・トレイルへの分岐点を後にし、ラヴァーキン・クリーク・トレイルをさらに東へと向かう。分岐点以降、急にトレイルのコンディションが怪しくなってきた。ホップ・バレーを南下しザイオン・キャニオンへ抜けるハイカーは数多くいるが、ラヴァーキン・クリークをさらに奥へと進む者が少ないのは一目瞭然だ。草木が生い茂ったトレイル、平均台の様に横たわる倒木。障害物競走の様相を呈してきた。狭い谷間に陽光は届かない。 目指すは、ベアー・トラップ・キャニオンの奥に佇む高さ10メートルほどの滝、ベアー・トラップ。直訳で「クマ捕獲用の罠」というわけだ。谷の奥でクマに出くわさないと良いのだが。山間部での行動の際には常時携行しているクマ除けのペッパースプレー。今回は荷物の軽量化のため持参していない。 藪をかき分けて辿り着いたトレイルの終点キャンプ13。平地はテント2つ分くらいだろうか。その横には、一抱えもあるような石が円を描くように並べてある。一見、椅子の様に見えるが、そのうちの一つには小石が積んである。更に円の中心にも「椅子」が一つ。首をかしげずにはいられない。昨晩、密教の儀式でも行われたのだろうか・・・。 キャンプ13の近くにある筈の滝が見つからない。草木に覆われたトレイルは更に細くなり、やがてそれも姿を消した。奥へと進む道はない。「クマ罠クリークの滝」は諦めるしかなさそうだ。

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両側に聳え立つに崖に遮られ谷底に陽は届かない。ちょっと妙な石の配列。

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(2/7/2023)


 

Nick D (ニックディー)

コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈け回る毎日。「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。

http://nick-d.blog.jp

 


 

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