世界最大のガイザーの集積地 天へと伸びる白い柱は必見!

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Vol.40 ▶︎世界最大のガイザーの集積地 天へと伸びる白い柱は必見!

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翌朝、御多分に漏れず、また早起きをした。外はまだ暗い。日の出前後は動物が活発に動く時間だ。ランニングシューズを履いて走りたいところだが、日が昇るまでの限られた時間。足頼みでは行動範囲が限られる。それにも増して、グリズリーベアーと生身の体での遭遇は避けなくてはならない。 遡ること5年前。いつも通り早起きして走る気満々でいた私を、マジで危ないからやめておけと説得したのは他でもない家族だった。仕方なく車でクマ探しをすることになった。それほど期待せずに、朝靄の中を走っていて遭遇したのが、傷ついた若いグリズリーベアーだった。万が一、パタパタと一人で霧の中を走っている時に、出合い頭で遭遇していたら、喧嘩に負けた腹いせに、一発、二発とフックを食らっていたところだった。グリズリーの特徴である長い爪でのフック。さぞかし、痛かったことだろう。 キャンピングカーをノロノロ走らせ、五年前に通った川沿いのルートを探索する。道のわきでは、朝露で程よく湿った草を美味そうに食む、ロンリー・バイソン。仲間から逸れてしまったようだ。その先には20頭はいるだろうと思われるエルクの群れ。立派な角を蓄えたオスが群れの安全を守る使命を全うするべく、あたりを見回している。視界が急に開けた。ヘイデンバレーだ。目の前には延々と広がる緑の丘。霧が晴れてきた。はるか彼方にバイソンの群れが見える。 残念ながらクマに出合う事なく朝の探索を終え、そのまま向かった先はガイザーカントリー。

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天高く上がる蒸気船のように勢いよく噴き出される熱水

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イエローストーンと言えばオールドフェイスフルという、毎日決まった時間に吹き上げる間欠泉が有名だが、その他にも数えきれないほどのガイザーや間欠泉がある。それもその筈、イエローストーン国立公園は巨大な火口の中に位置し、その地下では今でも活発な火山活動が続いている。ここは世界最大のガイザーの集積地であり、一箇所にこれほど沢山のガイザーが存在するスポットは他にない。その中でも、それらが特に多く集まるのが、公園西部のガイザーカントリーだ。 キャニオンカントリーからガイザーカントリーへ向かう19㎞のルート。中間地点を過ぎると緩やかな下りになる。向かう先の低地は朝靄に覆われている。その朝靄を突き抜け、空に向かって噴き上がる蒸気の柱が見える。ノリス・ガイザーに違いない。午前7時。朝のヒンヤリとした外気と蒸気の温度差のためか、天へと伸びる白い柱は鮮明で、そして巨大だ。 ノリス・ガイザー脇のキャンピングカー専用の駐車スペースに車を止め、人が疎らなスチームボート・ガイザーへと向かう。目と鼻の先で噴き上がる熱水の柱。ものすごい迫力だ。名前の由来通り、蒸気船のように勢いよく噴き出された熱水は、天高く上がり霧雨の様に周囲に降り注ぐ。体が濡れてきた。一旦、車に戻って朝食を摂ることにした。メニューは、フルーツ、ヨーグルト、シリアル、そしてコーヒー。家にいる時とほぼ変わらない朝食だ。唯一違うのは、コーヒーがインスタントだという事だろうか。 朝食を済ませ、今一度、スチームボート・ガイザーへと足を運ぶ。駐車場に戻った時には、つい先ほどまでガラガラだったスペースが一杯になっている。それどころか、駐車場の外までスペース待ちの列が延々と続いている。路肩にも所狭しと車が停まっている。どうして、こんなに混んでいるのだろうか?

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日の出前後は動物が活発に動く。グリスリーベアもここに潜んでいるのかもしれない

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(11/29/2022)


 

Nick D (ニックディー)

コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈け回る毎日。「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。

http://nick-d.blog.jp

 


 

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