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Vol.48 ▶︎鼻腔を刺激する冷気! さあ、絶景を楽しむぞ!
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ヘッドランプは必要ない。走り始めてから1時間。スタート時点ではうす暗く平面的だった周囲の景色。漸く立体感を伴うものとしてその姿を現し始めた。悴んでいた指先もすっかり温まった。気温は10度を超しただろう。太陽の光は未だ高い峰々に遮られ、コロブ・キャニオンの谷間には達していない。 先ほどから何度ため息をついただろうか。「はぁ~」、おそらく顔もにやけているだろう。「あ~気持ちいい」、今一度声に出す。一緒に走っている者がいれば、「うるさい、いい加減静かにしろよ」と怒られても致し方ないが、連れはいない。それどころか、周囲にはハイカーの姿さえ見えない。 重ね着しているレイヤーを一枚脱ぐ。汗ばんだ体の表面が僅かな間だけ冷たい風を感じる。然し、その感覚もすぐに過去のものとなる。身体を包みこむ冷んやりとした空気が鼻腔を刺激し、体内に新鮮な空気を送り込む。体中の細胞が躍動しているのが、鼓動を通して伝わってくるようだ。
ザイオンの絶景という外界の美しさから得られる喜び。そして、ドーパミンの作用だろうか、内から湧き出てくるような快感。久しぶりに心の底から走る喜びを感じる。最後にこれほど気持ちよく走ったのはいつだっただろうか。 モノクロ写真の様に、未だ色彩を伴わないザイオンの峰々。やがて圧倒的な迫力で立ち上がってくるだろう。ザイオンとは旧約聖書に登場する丘の名称で、「聖なる丘」あるいは「約束の地」を意味する。ザイオン国立公園の西側に位置するコロブ・キャニオン。過去に何度かこの地を訪れているが、谷間に足を踏み入れるのは初めてだ。間もなく、太陽の光を浴びて神々しく輝くザイオン・コロブの峰々を仰ぎ見る事となる。 リーパス・トレイルヘッドを発ち、ラヴァーキン・クリーク・トレイルを6キロほど南下し谷底まで下る。その後、東に方向を変え、トレイルの名称となっているラヴァーキン川に沿ってさらに6キロ。分岐点を経て最初の目的地であるコロブ・アーチに立ち寄る。
その後、ラヴァーキン川沿いをさらに東に進み、トレイルの終点となるキャンプ13、ベアートラップ・キャニオンを目指す。距離にしてざっと20キロ、そこが折り返し地点となる。ヘッドランプは持参しているが、日没前にはスタート地点に戻る予定だ。 静寂に包まれたトレイル。時折、谷間に響き渡るのは、早起きのキツツキがトントンと小気味いいリズムで口ばしを木の幹に打ち付ける音。軽快に下り坂を駆け降りる。息は上がっていない。レイヤーを脱いだためか、パックを背負った背中以外、汗はかいていない。
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峰の合間から顔を出した太陽
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ザイオンの峰の間から太陽が姿を現す。大きな光の塊から射られる無数の矢が、地表の生き物にエネルギーを与える。力強く放たれた矢は、否が応でも私の体を貫き、ハイ状態にある私に更なるエネルギーを注入する。 早く走る必要はない。いや、無理に走り続ける必要さえない。谷底を流れるラヴァーキン川のせせらぎ、それに沿うように蛇行するシングルトラックのトレイル、四方を囲む新緑とその背後に聳え立つ赤い岩。足元だけを見て走るには、美し過ぎる絶景がそこにある。周囲の圧倒的な景色に感嘆の声を上げながら足を前に進める。時折立ち止まり、後方を振り返る。巨大な岩が自らの美しさを誇るかのようにそこに佇ずんでいる。帰路に堪能できるであろう後方の景色だが、陽が昇れば見える景色もおのずと変わる。楽しんでおくに越したことはない。
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(1/31/2023)

Nick D (ニックディー)
コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈け回る毎日。「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。
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