Vol.28 スカイダイビング カリフォルニア州
飛行機に乗り込むや否や、動き出したかと思うと直ぐに離陸した。機体が小さいだけに加速も離陸もあっという間だ。一気に高度を上げ、下界は遥か彼方。そろそろかなぁと思いきや、更に高度は上り続ける。タンデムの相方は気を紛らわそうと、ビデオを片手に色々と話しかけてくるが、緊張で口の中はカラカラで上手くしゃべれない。
そうこうしている間に1万3千フィートに到達。殆ど何の前触れもなく最初のペアーがハッチから姿を消した。順番が廻ってきてしまうと、後ろから押され成す術も無くハッチへと。最後に、もう一回くらい覚悟の程を聞いてくれるかと思いきや、いきなり「オーマイガ~!」
一旦、空中に身を投げ出すと、落ちているという感覚は全く無い。正に飛んでいる感覚だ。恐れていたジェットコースターの急な下りの嫌な浮遊感もない。言葉に言い表せない高揚感。アドレナリン出まくり状態。気持ちは最高潮で大声で訳の分からぬ事を叫び続ける。顔面に吹き付ける風は物凄い勢いで口をこじ開け、喉の奥までカラカラに乾かす。あっという間に一分程度が過ぎ、パラシュートが開いた。そこからは、高揚感に包まれたままフワフワと空中散歩をし無事着地。おそらく生涯で最も密度の濃い数分があっという間に終了した。
かつて中世のヨーロッパで首吊り遊びをする特殊な集団がいたという話を聞いたことがある。仲間同士で集まり、交代で首を吊り、死に至る寸前で助け出すというもの。死に瀕するギリギリの瞬間に、究極の快感を得られるという。普通の状態で高所から落ちれば、間違いなく死に至る。思うにスカイダイビングもある意味、首吊り遊びに近い物ではないかと。暫くこの興奮の余韻は続きそうだ。
地球を走る
アウトドア・アドベンチャーのすすめ
Nick D (ニックディー)
コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈けまわる毎日。
「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。