台湾に根を下ろした 日本人の軌跡 |べっぴん塾

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第九十六回
台湾に根を下ろした
日本人の軌跡


紅茶と治水に込めた「共に生きる」志

台湾の旅で李久惟さんからお聞きした、台湾に深く関わった日本人はまだまだたくさんいて。あと少しだけ紹介をさせてくださいませ。

・台湾紅茶の栽培と研究に人生を捧げた「台湾紅茶の父」、新井耕吉郎。
世界的に紅茶の需要が高まり、農業技師の新井は台湾での生産地調査に参画、奔走します。ようやく日月潭(南投県魚池郷)のほとりに、紅茶栽培に最適な土地を見いだし、1936年、そこに紅茶の試験場を開設し、現地の人々と共に紅茶の栽培と研究を始めました。新井が何より大切にしたのは、現地の人々と共に作ることでした。

終戦を迎えたとき、紅茶のさらなる品質向上のため、家族を先に日本へ帰し、自らは技師として台湾に残る道を選びます。しかし翌年、マラリアに罹患し、台湾でその生涯を閉じました。
その後、紅茶の輸出は低迷しますが、新井の志を継いだ茶農家や技師たちはその技術を守り、紅茶を作り続けました。

1999年、921大地震が台湾を襲い、震源地であった南投県は甚大な被害を受けました。さまざまな産業が不況に陥ったまさにその時、新種の紅茶「紅玉紅茶(台茶18号)」が発表されたのです。新井が夢見た、台湾独自の高品質紅茶が半世紀の時を経て花開いたのです。震災復興策として日月潭紅茶は再び注目を集めることになります。
後藤新平が残した言葉に「金を残して死ぬのは下だ。仕事を残して死ぬのは中だ。人を残して死ぬのが上だ」とあります。新井もまた人を残していたのです。

・堤防を築き、住民の命と暮らしを守った、西郷菊次郎。
初代宜蘭庁長に就任した菊次郎は、度重なる洪水に苦しむ住民のため、堤防建設を決意します。莫大な予算を投じ、自ら現場に立って工事を指揮したと伝えられています。
菊次郎は治水だけでなく、農地拡大、道路整備、樟脳産業の振興、農産物増収政策、教育の普及など、多方面で地域の基盤づくりを進め、住民の暮らしを安定させました。

その功績を称え、当時の住民によって「西郷庁憲徳政碑」が建てられ、のちに堤防は「西郷堤防」と名付けられました。菊次郎は、父である西郷隆盛の教え「敬天愛人(私心なく、自ずと為すべきことを為して人を慈しみ、世の中に尽くす)」に生きた人でした。 (次号に続く)

(10/15/2026)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

 

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