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第六十四回
マナー違反とされる箸の作法
「探り箸」についてお話しいたしましょう
先週に続き、「嫌い箸」(マナー違反とされる箸の作法)についてお話ししましょう。
嫌い箸の一つに、「探り箸」があります。探り箸とは、盛り付けの中にある食材を箸で探り出して食べることをいいます。なぜ探り出してはいけないのでしょうか。
探り箸をすると、どうしても料理の盛り付けが崩れてしまいます。食事は舌だけではなく、見た目からも美味しさを感じることができるよう、美しく盛り付けてくださっています。そのお気持ちを受け取って、盛り付けを崩さないように食べることが、食す側の礼儀です。
その為には、手前にあるものや上に載っているものから食べるようにします。時に、苦手なものが手前に盛り付けられていることがあります。その時は、黙って飲み込む練習です。アレルギーの場合は避けねばなりませんが、そうでない場合は、苦手であっても食べることで子どもたちは「我慢」を覚えます。なぜ苦手であっても食べるのか。もとは大切な命であることも重要な理由です。そうして、食べ物を大切に思う心も育まれます。できれば、相手(食べ物)の立場になって、苦手でも有り難く思える程の心の広さももってもらいたい。食卓には様々な心を育む機会があります。その訓練は、人生にも役立ちます。生きていると、時に黙って受け入れねばならない場面に遭遇します。特に子や部下をもつ立場となると、自分がしたことではないことも、黙って背負わねばならないことがあります。食事を手前から食べ進めていけば、いつか大好きな食材にたどり着くことができるように、人生もその我慢が忍耐力や信用といった大きな力となって、きっと良きことにたどり着かせてくださることでしょう。
お店では、料理を盛り付けてくださった人は目の前にはいらっしゃいません。どのような食べ方をしようと相手には見えていません。相手から見えていなくても、敬意と感謝を込めて美しく食べる。そのような心が探り箸には表れているのです。

(3/5/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com
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