とんでもないTシャツが発売された。その名も「ドッチモインナーTシャツ」。名前の通り前・後が無い。さらに表・裏どっちを着ても良い。どんなに寝ぼけていても間違えない夢の下着だ。キカン坊の5歳児も大喜びするドン・キホーテ(Tokyo Central)の発明品だ。
私も早くも試着してみた。普段なら前後を確認しながら着るが、その必要はない。縫い目も全く気にならない。裏返して着てみても違和感なし。しっくりハマる。子供の頃母親に着方が悪いと注意されたが、このTシャツ見てどんな顔をしたか? 前後表裏Tシャツ「便利なの?」「横着なの?」・・・そう言えば「出汁入り味噌」「リンスinシャンプー」も発売当時は横着商品と言われたが、今やすっかり定着し大評判。
時代の変化は面白い。きっとドン・キホーテの商品開発部の事だから女性の前後表裏の無いアンダーウエアも開発しているに違いない。男性用はどうか。トランクス型は問題なさそうだがブリーフ型は流石に形状的に厳しいかも。通勤に着るスーツは? スラックスは今時のジャージスタイルでゴムや紐にすればOK。問題はジャケット。襟、Yシャツ、ネクタイをどうするか。考えました。Yゾーン全体を一つのエリアにしてマジックテープで貼り付けられるようにして移動させる。これなら行けるのでは。早速提案してみますがドンキの事だから既に試作品が出来ているかも。
時は急速に進化している。新型冷蔵庫には、スーパーマーケットで買い物中に庫内の食品がスマホに写し出される機能付きのものがある。私がお邪魔した友人の家は居間から7歳の子供部屋の壁がボタン一つで透明になって啞然とした。(子供にとってはたまったもんじゃないが。)少し前までは考えもしなかったことが現実になっていく。そう言えばトイレが終わった後、水が自動に流れるシステムには注意したい。自動洗浄がない時に流し忘れがある。先日も若い女性が知人の家で恥ずかしい思いをしたと聞いた。新しいものに出合う時、同時にアクシデントもある。
私の妄想は続く。30年後ドンキでは「人間の顔、表裏チェンジ・フェイス」が売られるだろう。仕事中は誠実な顔でアフター5は少し悪っぽく。ボイス・チェンジャーで声もお好みに変身。私なら金髪フェイスとロッド・スチュワートボイスにして『アイム・セクシー』を絶唱する。これでモテモテ男になる事も容易に想像出来る。しかし問題は30年後まで生きているかなのだ。出来れば40年長く生きられる薬、ドン・キホーテさん作ってくれませんか。問題発生!みんなが同時にチェンジ・フェイス購入したら目立たなくなる恐れが!
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。