台湾を訪れたら、 思い出してほしい日本人 |べっぴん塾

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第九十七回
台湾を訪れたら、
思い出してほしい日本人


鳥居信平さんが残したもの

台湾最南端の観光地として賑わう屏東県。この地を訪れることがあれば、思い出していただきたい日本人がいます。鳥居信平。日本初の地下ダムをつくり、屏東平原を洪水・干ばつから救った農業土木技師です。

現在は農作物の大生産地となっている屏東平原ですが、かつては水害がひどく、荒野が広がっていました。難しい土地の改良の任を負ってやってきた鳥居もまたこの地を徹底的に調査し、地下を流れる伏流水に着目します。ここなら地下ダムが造れる。そう確信した鳥居は、水源使用の許可を得るため、現地の言語を覚え、山奥の原住民集落へ何度も足を運びました。自然を壊すことなく工事を進めること、そして地域の未来のために必要な事業であることを、時間をかけて丁寧に伝え続けたのです。やがて信頼が芽生え、工事には原住民の若者たちも加わりました。鳥居の着任から9年。維持管理に手間も費用もかからず、環境に優しい地下ダム「二峰圳」が完成します。伏流水であるため豪雨となっても濁らず、土砂を通る過程で自然にろ過されるため飲用水にも使え、動力を必要としないため環境負荷もない。まさに画期的な仕組みでした。

鳥居はその後も、新たな地下ダムと農場の開設に取り組み、乾期にはサトウキビ、雨期には自家用米、余剰水は畑へまわす輪作を導入し、農民の暮らしの改善にも力を尽くしました。完成から100年を経た今も、二峰圳は地域の飲用水と灌漑用水を支え続けています。
2009年、鳥居の故郷、静岡県袋井市に台湾から鳥居の胸像が贈られ、除幕式が行われました。80年以上の歳月を経ても、鳥居の名は台湾の人々の心に残り続けているのです。

「台湾の旅で学んだ日本人」を14回にわたって記して参りましたが、名が残る人々だけではなく、誰もが同じ想いであったことがわかる石碑を最後に紹介したいと思います。
台湾北部で、長い間、道の脇に埋もれていた石碑が発見されました。そこには、日本語で「台湾よ、永に幸なれ」と刻まれています。刻字は今から100年ほど前のものとされ、日本統治時代に、先人たちが石に刻んでまで台湾の幸せを願った強い想いが伝わってきます。同時に、その祈りは今を生きる私たちへ向けられたメッセージのようにも感じられます。

(10/22/2026)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

 

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