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テレビの通販番組を見ていたら定番の育毛剤のCMが流れてきた。その商品を利用した一般の人の喜びの体験談も紹介している。物凄く毛髪が増えているのだ。横に座る奥様もびっくりの笑顔。これを見たら誰だって購入したくなる。テレビ画面下には小さな文字で「個人差はあります。」と但し書きがあるのだが、そこには目もくれず、薄毛に悩む皆さんはすがる思いで電話をする。メールではなく、高齢者はあくまでも電話で注文する。私の周りの友人もお世話になっている。
話はここからなのだ。しかし一向に育毛効果が上がらない。それも何年もしぶとく使用しているのに。期待するが変化は残念ながら起きない。これが頭痛薬や胃薬なら、すぐに文句を言って他の薬に替えるのに、沈黙なのだ。何年も効果が無ければ薬品会社にクレームのひとつを言ってもいいはずなのに沈黙を守る。放送しているテレビ局に怒鳴って連絡する話も聞かない。普段口うるさい連中も大人しい。この現象どうしてなのか。消費者心理、調べてみました。なぜ効果が無くてもクレームが起きないのか。
例えばレストランだと「美味しい・不味い」、ホテルなら「接客態度が良い・悪い」などの判断基準が即座に明確に出るが、髪の毛は個人差が極端でゆっくり変化し、年齢、体質、生活習慣が絡んでくるため…そうなんです、育毛効果の判定が曖昧で出来づらい。消費者自身が「もう少し続ければ」「自分の使い方が悪いのかも」「年齢だから仕方ない」「生活習慣を変えないと」と、クレームの矛先が企業ではなく何故か自分に向かう傾向にあるのです。効果がないと認めると、自身の老いを認めることになる。つまり「効かなかった」=「もう戻らない」と自分の人生の立ち位置を宣言する事に。これは厳しい。心理的には商品への不満よりも自分の限界の確認になってしまうので、沈黙してしまう。 人間の関心事は年齢を重ねると変化が起きる。若い頃は成功、収入、評価に重点を置くが、高齢期になると健康、衰えないにシフトされてゆく。人生の目標がプラスからマイナスを防ぐ事に変化。
そうなんです、育毛サプリの存在は人生修業にもなっている。「育毛剤の未来」を考えると…、基本的には市場から無くならないが、SNSの影響で、加工され若さが溢れ過ぎた結果、逆に自然体や年齢相応の価値「アンチ・アンチエイジング文化」が見直される兆しも。勿論高度な医学の進化で劇的な育毛効果薬品が出る可能性もあるだろう。 そんなことを考えている間も育毛剤のテレビCMは毎晩流れる。今度こそはと信じて購入してしまう。やっぱり日本人はお人好ですね。気持ちわかります。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。











