知っていますか「AV法案」って。2022年6月に施行された法案「AV出演被害防止、救済法」は、20歳前後の女性がホストにハマり多額な借金の返済に困ったり、恋愛関係がうまくいかずやけになったり、家庭に問題を抱えた結果AVに出演してしまうというケースが社会的に問題になり出来上がったという経緯がある。「出演者は契約してから撮影まで1ヶ月間空ける。撮影終了後4カ月間発売が出来ない。彼女たちが冷静に考える期間を設ける。」という内容です。
保護する観点としては良いのですが、問題なのは、全ての女優さんに適用されてしまう事。初めて業界に来る新人に1年間の適用なら私も賛成だが。20年~30年もこの業界で働くベテランの女優さんにまで一律の規制が必要なのか。この仕事で家族を養い、子供も育てているような女優さんへの法の適用は酷すぎるのでは。仮に仕事制限をするなら、当然生活保障をしなくてはいけない。「物流業界2024問題」では4月からトラックドライバーの残業の上限が年間960時間までに規制される。当然ドライバーの収入は減ることになる。運輸業界属の政治家がドライバーの保障問題で動いているが、悲しいことにAV業界を守ろうとする政治家はまれだ。守っても「票にならない」「イメージが悪い」が現状。可哀想過ぎる。
それだけではない。撮影日程が決まらない弊害がスタッフにも発生している。作品が極端に減少しているため、資金繰りの目途がたたず倒産する会社が続出。最も危惧するのは、正規のAV会社を敬遠して不法な制作事務所での無許可撮影に出てしまう女性が多発することだ。闇ルートで騙されて海外AVにも出るトラブルも。先日は友人から「スマホに連絡しても音信不通。戻って来ない。どうしよう。」の相談が私に来た程。それだけではない。街中でも新宿、新大久保、鶯谷界隈では素人のストリートガール(立んぼう)が目立ってきた。これらも「AV新法」の弊害ではないだろうか。
改めて「アダルトビデオ」を考えてみた。もしAVが無かったら、性犯罪は現状より増えているのでは。社会のセクシャルハラスメントももっと横行しているのでは。アダルトビデオを見る事によって欲求を抑える事が出来る。10代~20代のムラムラ男性はそんな感じでは。
先日多くのAV女優さんと話す機会を持ったが、皆さん職業に大いにプライドを持ち、堂々と家族や友人にも仕事内容を話している。白い目で見ているのは政治家だけかも。一刻も早くAV業界の正常化を望む。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。