特別取材!クリスタル・レイター:LAFC広報部ディレクター|This is my Dream Job! 

米国ニットータイヤ presents Weekly LALALA Special Interview

This is my Dream Job!
最高のサッカーチームとコミュニティの人々を繋ぐ架け橋に

クリスタル・レイター Crystal Reiter
ロサンゼルス・フットボール・クラブ(LAFC)広報部ディレクター

▲LAFC広報部ディレクターを務めるクリスタル・レイターさん。ロサンゼルス・トーランス出身の日系4世。

昨年開催されたFIFAワールドカップ・カタールの盛り上がりでもみられるように、日本でのサッカーの熱狂的人気ぶりは周知のこと。スポーツアナリティクスによる2023年の調べでも「世界で最も人気のあるスポーツ」はサッカーであることが報告されている。ではアメリカではどうか。アメリカでもサッカーは、1位人気のアメフト、2位バスケ、3位野球に次いで4番目につけている人気スポーツ。また今夏にはアルゼンチン代表のリオネル・メッシがフロリダのチーム、インテル・マイアミに移籍し7月に合流することが報じられた。さらに2026 FIFAワールドカップがロサンゼルスをはじめとしたアメリカ11都市でも開催される。アメリカでのサッカーの熱い盛り上がりはさらに加速していくことは間違いない。

 アメリカのサッカー熱を語るに外せないのが、プロサッカーリーグ「メジャーリーグサッカー(MLS)」。開幕して30年未満ではあるが、若年層や中年層のサッカーファンを獲得し、サッカーをアメリカ4大プロスポーツリーグの一つに押し上げることに大きく貢献。

 そのMLSで昨シーズン全29チームの頂点に立った全米チャンピオン「ロサンゼルス・フットボール・クラブ(LAFC)」のCOMMUNICATIONS& PUBLICITY(広報部)ディレクターを務めるのがクリスタル・レイターさんだ。

日系文化×アメリカ文化 ― バイカルチュラルな子供時代

 結婚する以前の旧姓はクリスタル・フクモト(CrystalFukumoto)、トーランス市出身の日系4世。同市は日系企業もありロサンゼルスの中でも日本人の多く住む日系コミュニティとして知られているが、それとは異なり、60年代以降に都市開発が著しく進んだ古き良きアメリカが感じられるトーランスのサバーバンタウン「マーブル・エステーツ」で育った。「開発とともにこぞって各地から人々が住み始めたこのエリアは広大なヒッコリーパークや安全な学校区が魅力の、のんびりとしたアメリカ的な環境でした」

曽祖父母は日本出身。父はハワイ出身で南カリフォルニア大学(USC)で学ぶためLAに移り、イーストLA出身の母と出会った。「両親と兄の4人家族の家に育ちました。子供の頃には夏になると、母が私たちをガーデナのお盆フェスティバルに連れて行ってくれたり、お正月には祖母が作ってくれた日本食を食べて、お正月の行事を楽しみながら過ごしました。なのでアメリカンな環境で育ったとはいえ、日本食や日本文化から大きな影響を受けているのは間違いない。今も昔も大好物は、天ぷらです(笑)」

▲二世ウイーク2004では、女王を選出する「コロネーション・ボウル」の1st Princessに選ばれたクリスタルさん(写真左から2番目)。

「夢はワールドカップ出場!」のサッカー少女

 バイカルチュラルなバックグランドを持つクリスタルさんだが、幼い頃から体を動かすことが大好きで、協力的だった両親は、ソフトボールにバレーボール、水泳・・・スポーツといわれるものには何でも挑戦させてくれた。その中でも、5歳の時に始めたサッカーは大学時代までチームの選手として活躍し、現在も時々プレーして楽しんでいるという。「サッカー少女だった子供の頃の夢は、いつかワールドカップに出場すること!そして、お医者さんになることでした。学校での得意科目は数学と科学で、勉強することが本当に楽しかった。ワールドカップめざしてサッカーにも情熱を注いでいましたが、私が大学を卒業する頃までアメリカに女子プロサッカーリーグがなかったので、女子選手としてワールドカップをめざすなんて不可能だったし、私自身にはそこまでの実力もなかったんです」

 大学は、UCアーバインで生物学を専攻。医者になることをめざして勉強していたクリスタルさんがスポーツ分野の仕事に興味を持ったのは、大学の必修科目であるインターンシップ先を探していた時。「子供の頃からサッカーやスポーツは好きだったものの、スポーツ業界で働くなんて考えたこともなかった。そんな時、私の友人がスポーツ関連のインターンをしてみたらとても楽しかったと言っていたので、私もスポーツ業界での仕事に興味を持ち始めました。UCアーバイン内で様々なスポーツの情報を取り扱うスポーツ情報部で働いてみたところ、やりがいを感じた。スポーツの世界に足を踏み入れたんです。

▲ドジャース勤務時代のクリスタルさん。写真左は、ドジャース専属実況アナウンサーを67年間務めた殿堂入りアナウンサーのビン・スカリー氏。

大学卒業時にはロサンゼルス・ドジャースでのインターンシップを開始し、2002年に正式に同球団のパブリック・リレーションズ(広報部)に配属、5年間勤務した。「私のプロスポーツ組織でのコミュニケーションキャリアは、メジャーリーグから始まりました。信じられないような幸運でした。というのも私は幼い頃からずっとドジャースのビッグファンでしたし、家族で試合を観によくドジャー・スタジアムに足を運んでいました。ですから、働き始めた当初はなんというか・・・夢の場所で働いているようなちょっと不思議な感覚でしたね」

2021年シーズンより LAFC広報部へ

その後、マーケティング・広報エージェンシーなどでの長年の勤務を経て、2021年シーズンの途中からロサンゼルス・フットボール・クラブ(LAFC)に入社し、広報・宣伝部門のディレクターに就任。現在、同クラブでは、どのような役割を担っているのだろうか。

「私の役割は、あらゆる相互のコミュニケーションを促進し、クラブ全体を発展に導いていくこと。そこにはフィールドで活躍する選手たちやチームの業績だけでなく、LAFCの本拠地であり我々が運営する『BMOスタジアム』の発展も含まれています。同スタジアムは、サッカースタジアムとしても国際競技場としても、そしてコンサートホールとしても素晴らしいベニュー。我々が提供できる全てのことをより多くの皆さんに知っていただくこと、それが私の使命です」

 LAFCにとってMLS参入5年目となった昨シーズンは、シーズンの初めから終了まで極めて注目を集めた年だった。新監督にUSLチャンピオンシップのラスベガス・ライツからスティーブ・チェルンドロ氏を迎え、選手陣にはスポルティング・カンザスシティからイリエ・サンチェス選手、コロラド・ラピッズから日系人のケリン・アコスタ選手など実力選手たちを獲得。さらにLAFCは、MLSで初優勝を果たした。「私はまだ入社2年目。この短期間ではなかなか得られない経験や学びがありました。そして何よりも、チームの勝利のために多くの素晴らしい人たちが働いているクラブの一員になれたこと、協力し合える仲間の一員になれたことが嬉しかった」

▲LAFCのミッドフィルダーとして活躍する日系アメリカ人のケリン・アコスタ選手とともに。同選手は、FIFAワールドカップ・カタール米国代表としても健闘した。

日系人アコスタ選手と日系コミュニティを繋ぐ架け橋に

▲昨秋、アコスタ選手をサポートするスポンサー企業である米国ニットータイヤ主催のプレスイベントを開催。クリスタルさんは広報担当として、アコスタ選手とLAの日系メディアを繋ぐブリッジ役を務めた。(写真左:米国ニットータイヤ会長兼CEOの水谷友重氏)

 移籍し新天地LAでの挑戦を始めたばかりの日系人ケリン・アコスタ選手と、日系コミュニティや日系文化、LA日系メディアを繋ぐ橋渡し役も果たした。「ケリンがLAに移籍してきた時、彼はこう言ったんです。『僕はジャパニーズなんだ。それなのにこれまで日系コミュニティや日本のカルチャーに触れる経験をしたことがないから、LAでたくさん学びたい』と。私はすぐにケリンと日本人である祖母様やお父様が一緒にリトル東京にある全米日系人博物館(JANM)を訪れるよう手配しました。彼はそこで日系人の歴史を学び、日本文化のあふれるリトル東京の街を散策し、生まれて初めて日本人として家族との絆を強くした素晴らしい体験をしたのです」。アコスタ選手は、昨年リトル東京での「二世ウイーク・フェスティバル」では名誉グランドマーシャルの一人としてパレードにも参加。「ケリンの二世ウイーク参加に携わることができて、私自身もお祭りに行っていた子供の頃を思い出して懐かしかった。

 LAFCチームにとっても、選手が地域社会に出て人々と繋がりたいという強い気持ちを持つことは素晴らしいことです。だから、私も一日系人として彼をそこに送り出す一端を担えたことはとても嬉しいことでした。今年はジャパニーズ・ヘリテージ・ナイトフェスティバルを企画したいなと思っています。まだ具体的に決まってはないのですが・・・。LAFCカラーのブラック&ゴールドで作る七夕飾りなんてどうでしょう。きっと素敵なイベントになるはず」

 「ケリンも混血、そして私自身の子供たちも混血です。特にここロサンゼルスコミュニティはどんどん人種が多様化していますから、日系人コミュニティもどんどん変化しています。そんな中で、人種や文化の壁を越えて人々が同じ体験をシェアするということは、とても大切なことだと思う」と話すクリスタルさん。

This is my Dream Job!

 現在、結婚して3歳と5歳の男の子を持つママでもあり、妻・母・仕事をマネージするエネルギッシュな一面もみせる。「働く親なら誰でも、仕事と家庭のバランスを取るのは大変なことではあります。どちらも責任が伴いますから。しかし、そのどちらでも力を発揮できるのは、LAFCが家庭の事情に理解を示してくれ、私の所属する部署もとても協力的。スタッフ一人ひとりが努力する姿勢をとても応援してくれます。今、LAFCでは男性だけでなく、多くの女性もリーダーシップを発揮しています。ジェンダーに関係なく皆が進歩することについて包括的にサポートが充実しているところもLAFCの優れているところだと思います」

▲家族全員サッカーファン。LAFC観戦を楽しむのはもちろん、家での話題もサッカーで満載。とにかく家族で旅行に出かけたり、様々なアクティビティを楽しむことがリフレッシュになるという。

 インタビューの最後に「What’s your dream」と聞いてみた。

「そうですね、これは答えになっているかどうかなのですが・・・今のこの人生が私の夢なんです、ドリームジョブ!大好きなサッカーの仕事をして、大好きなチームのために働いて、職場や家族のみんなが応援してくれる。スポーツの仕事を始めたばかりの頃は『まぁ、やってみるか』と軽くトライする気持ちでスタートしたんです。でも、やってみたらそれが本当に楽しいことだった。キャリアを積みながらチャンスを逃さずに一生懸命働いて、諦めずに情熱を追い求めていたら、ここまで来ることができた。私はLAFCが大好きです。これからもこのチームがどこまで進化していくのか見届けながら、私自身も共に成長していきたいと思っています」

▲2022年MLSチャンピオンに輝いたLAFC。

(6/28/2023)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。