床屋さんは面白いのだ

30年振りに髪の毛を伸ばしたので、これまた30年振りに床屋さんに行った。この間まで自前のバリカンで刈っていたため、今現在料金が幾らなのか、どんな設備があるのか全く知らなかった。その前に何処に床屋さんがあるのかも分からない。

ネットで調べてみると床屋さんの数が減っている。若い人は1000円でシャンプーもしないお店に行くらしいが、さすがにそれは無理。30年前通っていたお店は閉店しているし、青山や原宿辺りの流行りの気取った高級店に行くのも気が重い。途方に暮れていたら、偶然にも目黒の住宅地に昔ながらのお店を発見したのだ。お店の前にはお約束の赤と青の縞柄のサインポールが嬉しい。

早速入ってみた。意外とこざっぱりした内装と長渕剛のBGMがこれまた嬉しい。「順子」が流れていた。床屋さんと長渕は微妙な感じだが悪くはない。私と同世代のマスターの趣味なのだろう。奥様らしい女性に「予約のお客様ですか。」と聞かれた。そうか、今時、床屋さんも予約が必要なのか、、、「すみません、飛び込みなんです。」と返答するしかない。私の声が聞こえたのか、奥の部屋からご主人が登場!威勢のいい声で「いいよ!やるよ!」の嬉しい返事が帰ってきた。さすが、長渕ファンはこうじゃないと!

さっそく理髪台に座る。なんと言っても30年振りだ。不思議と緊張する。先ずは、それ程多くない髪を水で濡らして櫛で整えてもらった。普段指先で整えている私としてはこれだけで新鮮だ。鏡を見ながらご主人が「どんな髪型にしますか。」と。私は一瞬たじろいでしまった!店を探すことばかりに気がいって、どんな髪型にするか全く考えていなかった。何故考えていなかったか。店探しの事だけだはなく、薄くなった髪の予防対策に全神経を注いでいたため、髪型を考える余裕なんか本当は無かったのだ。

暫く沈黙が続く・・・BGMが長渕剛の「トンボ」に変わった・・・その時、私の頭に突然イメージ沸いたのが寺尾聡の髪型だ。もちろん「ルビーの指輪」の頃でもなく、「西部警察」でもなく、最近役者として円熟味を増した寺尾聡だ。

 

これはいい!さっそく店主に希望を告げた。無謀なお願いにひるみながらも答えようと頑張ってくれた。さすが長渕ファンは違うのだ。二人で改めてネットで現在の寺尾聡の髪形を研究した。髪質は問題なし、毛量も何とかいけるという嬉しい結果が出たのだ!

そうなんです、わたし、年末まで時間をかけながら徐々に「鎌倉の寺尾聡」になるのです。皆さんクリスマス頃を楽しみにしてください!乾杯!

 

 

■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

 

 

 

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