朝の車通勤の途中でコンビニに寄ることが多い。セブンイレブンでコーヒーを買う。スターバックスもいいがチョット高いので毎日は行かない。とは言ってもコンビニで無駄遣いをしているのだが。ドジャースの大谷、山本選手が活躍した翌日はスポーツ新聞を買うし、今年の夏のような猛暑だと朝からハーゲンダッツのアイスクリームかガリガリ君をつい買ってしまう。朝食を摂ってこない日はアメリカンドッグを頬張る。まるでやっている事が高校生と変わらない。これが冬になるとおでんが恋しくなってくる。鮭、お赤飯のおにぎりも欠かせない。普通この歳になると栄養バランスを考えないといけないのに。
買い物が終わって店から出てきた時にふとこんなことが脳裏を横切った。「もしコンビニが日常生活から消えたらどうなってしまうのか…」コンビニが初めて日本に登場したのは約50年前、江東区豊洲に出来たセブンイレブンと言われている。勿論私はコンビニがない時代を知っているが、今消えたらどうなるのだろう。
朝のコーヒー、サンドイッチ、おにぎり難民になることは間違いない。昼時だってサラリーマンや現場仕事の人は路頭に迷うことに。インフルエンザが流行したらマスクも除菌剤もティッシュも購入しづらくなる。料理の途中でお醬油、ソースが無いのに気づき慌てても近所のコンビニは無い。トイレットペーパーなら更に悲惨な結果が待っている。電気、ガス、水道、税金などの公共料金の振り込みはついでに出来たのに。緊急時の水、軍手、電池予備も気になる。コンビニロスを考えただけで世の中パニックになりそうだ。
恐らく1ヶ月もすれば知恵ある人は自宅前で商売を始めるのでは。普通のお宅の玄関先で綺麗な娘さんが手作りコーヒーの販売営業をすることに。それを目当てに男性陣は早起きしそう。住宅街の至る所ではおにぎり屋さん、サンドイッチハウス、移動スタミナドリンクショップなどが乱立するのも想像出来る。事務的なコンビニのレジと違ってそこかしこから「いってらっしゃい」の声が聞こえてきそうだ。そして、小さな町の商店街は息を吹き返す事に。おばあちゃんの薬局、昔懐かしい駄菓子屋も見てみたい。豆腐屋さんのラッパも復活するに決まっている。一番嬉しいのは人々の交流が広がり、町の皆が顔見知りになる事では。
コンビニが消えるのは大変だが、人間は何かを無くすと新たな物を手にする才能がある。そんな時代が来ても面白い。毎日が縁日。お祭り状態な日常。その日が来たら私は〝夕暮れの一人ホストクラブ・テリー〟を開店します!お客さん来るはずです…
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

