日本昔話でお馴染みの『桃太郎』、改めて考えてみた。昔々おじいちゃんは山に、おばあちゃんは川に洗濯に行くと上流から大きな桃が流れてきて、家に持ち帰り桃を割ってみると中から赤ん坊が。二人はこの子を〝桃太郎〟と名前を付けて暮らし始めた。日本人なら誰でも知っているお話。歳月は流れ、桃太郎は少年に成長した。ある晩二人に大事な話をします。「今から鬼ヶ島に行って鬼たちを成敗してきます。」びっくりした二人は訳を聞くと「鬼たちが村人の畑を荒らし、食物を持って行ってしまい困っている。鬼を退治しないと。」強い決意を桃太郎は語った。戦に行くのは心配と一度は止めたが桃太郎の熱意に負けて許可する事に。旅先でお腹が空くだろうときび団子を持たせた。
道中、きび団子目当ての犬、サル、キジを味方につけ、いざ鬼ヶ島に。その時、鬼たちは宴の最中だった。桃太郎達の奇襲に、普段は屈強な鬼がまさかの敗北となってしまった。命乞いする鬼に「これから真面目に生きるのなら命はまでは取らない。」と。感謝した鬼の親分は財宝を桃太郎に渡すことに。鬼から貰った財宝を手土産に桃太郎たちはふるさとへ意気揚々と帰って行った。村人から大歓迎を受け、その財宝を皆にプレゼントして村は経済的にも治安的にも良くなり幸せが訪れる。めでたし、めでたし。
以上が童話『桃太郎』のストーリーだが、これで本当に良いのだろうが。そんなに鬼は悪いことをしていたのか。鬼ヶ島で鬼一族は普通に生活していたのでは。食料を取りに行ったのも飢饉で子供たちに与える食べ物が無かったからかもしれない。最近でも北海道、東北地方で食料不足のため山から熊たちが人間の住むエリアに出没するニュースが頻繫に流れている。元をただせば熊たちが生息していた山を開発してしまった事が原因ではないのか。なぜ桃太郎は戦う前に鬼と話合わなかったのか。鬼一族に事情を聞けば違う解決策もあったかもしれない。まして鬼の財宝まで戦利品として持ち帰ってくるなんてやりすぎではないか。やられた鬼の子供たちは人間を恨むに違いない。新たな争いも十分に考えられる。
提案『シン桃太郎伝説』…どうそうすれば人間と鬼たちが仲良くやっていけるか。人間と鬼の交流スポーツ大会があっても面白い。綱引きは力のある鬼組に軍配が上がりそうだが、バレーボール、バスケットボールは熱戦が期待出来る。気になるのは野球。普段如意棒を持っている鬼は侮れない。軽々とバットを振り回すがピッチャーのコントロールの繊細さは人間に分があるのでは。いかん、また話がズレてきた。願いは「人間と鬼の共生」。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

