

プロスポーツの世界で大切なのは『順応性』
変化に抵抗するのではなく、変化を受け入れる
ジェニー・オー Jenny Oh
ロサンゼルス・ドジャース
グローバル・パートナーシップ・パートナーシップサクセス
バイスプレジデント
(Los Angeles Dodgers Vice President, Partnership Success)
昨年勤続25年。緊張と感動の始球式
2024シーズンは、グローバル・パートナーシップ・アドミニストレーション&サービス部門のシニアディレクター(当時)を務めたジェニー・オーさんにとっても、特別な年となった。昨年ドジャース勤続25年を迎えた彼女に、長年球団を支えてきた功績が称えられ栄誉が贈られた。同年7月23日にはホームで行われたサンフランシスコ・ジャイアンツ戦前の始球式に登場。緊張のファーストピッチの瞬間を思い返すと未だに嬉しさと興奮が湧き上がってくるのだという。
「ドジャースでの25年を振り返ると、たくさんの素晴らしい出来事が目に浮かんできます。その中でも最も輝くモーメントのひとつは、やはりドジャースタジアムで始球式を行ったことです。マウンドに立ち、私が力をこめて投げたボールをクレイトン・カーショウ投手がキャッチしてくれました。同時に、カーショウ投手と初めてフロリダのスプリングトレーニングで会った時のことが蘇ってきました。彼がドジャースに入った新人の時から、数々の勝利を果たしチームへ多大な貢献をしてきた活躍をずっと見てきました。彼は将来殿堂入りを果たすことでしょう。そんな偉大なメジャーリーガーと始球式ができたことは、一生に一度の宝物です」
この日は、スポーツやビジネス、文化においてインパクトを与え、リードする女性たちを応援する「Woman’s Night」が行われた日でもあった。「ドジャース・ウーマンズ・ビジネス・リソース・グループの同僚たちが推薦してくれてこの場に立てたことをとても感謝しています。ロサンゼルス・ドジャースでの25年間の功績が認められたことは光栄であり、また、このような機会に参加させてくれたリーダーシップチームには感謝の言葉もありません」
スポーツに親しんだ子供時代。
スポーツへの情熱が将来のキャリアパスに
生まれも育ちもロサンゼルス、韓国系アメリカ人のジェニーさん。父は日本人とのハーフ、自身は日本人クオーターだ。母が野球ファンで、子供の頃は弟も連れてドジャース観戦に行ったり、もともと体を動かしたり音楽も好きなアウトドア派。大学時代はUCLAで学び、NBAのロサンゼルス・クリッパーズやドジャースでのインターンを経て、最初はドジャースのチケット部門で正社員として採用された。一野球ファンだった彼女をプロスポーツの世界へと導いた原点はどこにあるのだろうか。
「幼いころから私にとってスポーツは身近なものであり、スポーツに深い情熱を注ぐようになりました。それがやがて将来の目標を明確化するキャリアパスを形作るきっかけになったんです。競争やチームワーク、そして常に高みを目指す姿勢は、私がとても大切にしていた価値観でした。そこからさらにスポーツに対する愛情が確固たるものになったのは、UCLAで学んでいた大学時代のことでした。なんとも幸運なことに、在学中に、UCLAの男子バスケットボールチームが全米選手権で優勝したのです。自分たちがサポートし情熱を注ぐチームが優勝した瞬間は、私の心に強烈な感動と印象を残しました。チームが最後まで戦い抜き、タイトルをその手に掴むことは単にチームが勝利したというだけでなく、チームを支え愛するUCLAのコミュニティと、多くのファン一人ひとりに、夢や勇気、大きく大切な何かをもたらすのだと、身をもって知ったのです」

限界を超えて掴んだ成功をコミュニティと
分かち合う
ジェニーさんはUCLA時代に体感したスポーツの素晴らしさ、すなわち「頂点を目指して努力することの大切さや、限界を超えて突き進むこと、そして成功はコミュニティと分かち合うことでより大きな意味を持つ」ことを現在も信念としている。「あの時の経験は、ドジャースでの自分のキャリアの上で生き続けています。 一年を通して私たちドジャースのフロントオフィスは一生懸命に働き、毎シーズン優勝するために並々ならぬ努力をしています。 そんな努力があるからこそ、ドジャースが12年連続でポストシーズンに進出できた喜びはひとしおです」

長年のキャリアが教えてくれたもの
ドジャースに入り、パートナーシップ・サービス部門に携わるようになって四半世紀。同部門のシニアディレクターを13年務めた後、今シーズンからバイスプレジデントとなった。プロスポーツのビジネス畑でエネルギッシュに駆け抜けて来た。そんな自分を客観的に見つめながら、「私は間違いなく自分が目指したポジションに辿り着けている。それがこれほど長く続いている理由だ」と話す。「私はキャリアを通じて、適応力や人間関係の構築といった重要な分野で大きく成長することができたと思っています。これらのスキルは、私のプロとしての成長の基礎であり、仕事とプライベートの両方で困難を乗り越えることを可能にしてくれました。スポーツの世界では、『順応性』が自分の成功に欠かせません。 変化に抵抗するのではなく、変化を受け入れることで、私はこの世界でより大きく貢献し続けることができた。野球に言い換えると、どんなカーブボールを投げられても適応できなければならない。 変化は避けられないものであり、成功するためには、ピボット=発想の転換ができることが大切です」
パートナーシップサクセスの役割とは。
パートナーシップの軸は、信頼とコミュニケーション
球団の「ビジネスサイド」をリードするパートナーシップ部門。プロスポーツ業界におけるパートナーシップでは広告目的だけでなく、企業・団体とスポーツチームが積極的に意見交換を行い、お互いの目的や目標、価値をシェアしながら事業を共に創り上げていくことに重点が置かれている。
グローバル・パートナーシップ、パートナーシップサクセス部門のバイスプレジデントを務めるジェニーさん。「私の役割は、ドジャースとパートナーシップを提携する国内外のパートナー企業との関係の管理です。パートナー企業と私たちジャースが事業を共創することにより、双方がブランド力や市場での発信力を高め収益に繋げることができているか、また企業が我々とのパートナーシップに満足しているかを確認します」
企業の役員や商品担当者など幅広い方々と一緒に仕事をしてきた。そこで厚い信頼関係を築き上げてきたことは自分にとって尊い財産だと話す。「強固で永続的な関係を築くことは、私のキャリアにおいて最もやりがいのあることの一つです。成功するチームやパートナーシップの中心には信頼とコミュニケーションがあると、私は常に信じてきました。長年にわたり、私は同僚、クライアント、関係者との繋がりを築いてきました。 このような関係があるからこそ、どのような仕事・目標であれ、実行し、成功させるために協力し、共に働くことができるのです。他者を理解するために時間を費やし、積極的に耳を傾け、サポートを提供することで、私のネットワークが強化され、より良いリーダー、チームメイトになることができているのです」
ファン+チーム+オフィスすべてを繋ぐ「ドジャースタジアム」
改めて、昨年2024シーズンは、ジェニーさんにとっても、チームにとっても、球団、ドジャースファンにとっても、特別なシーズンとなった。そこには、ドジャースにかかわるすべてを繋いだ大きな存在がある。それは「ドジャースタジアム」だ。1962年にロサンゼルスにオープンして以来、この場所はたくさんの人々に夢を与えてきた。
その中で日本人として注目したいのが、トップデッキのとあるスポットだ。この場所にドジャース元オーナーのウォルター・オマリー氏に贈られた古い石灯篭(stone lantern)がお引越しとなり、トップデッキに移設されたことが話題となった。「このスタジアムのハイライトの一つは、この石灯籠のストーリーをクライアントやパートナーシップの方々や、コミュニティの人々と共有することです」

必ず訪れたいスポット「トップデッキ」
事の始まりは1956年。ドジャースがポストシーズンツアーで日本を訪れた際、球団社長オマリー氏は、日本プロ野球創成期に日米間の交流に尽力した人物である鈴木惣太郎氏と出会った。62年のスタジアムオープン式典にも招待し、お礼に何か特別なプレゼントをと考えた鈴木氏がオマリー氏に贈ったのが、この石灯篭だった。重さ約1・8トンもある石灯籠は65年に日本から到着し、ドジャースタジアムにあった日本庭園に設置された。その当時、日本から度々アメリカを訪れていたのが読売ジャイアンツだった。そして1967年、読売ジャイアンツの選手たちは、フロリダ州ベロビーチでの春季キャンプに向かう前にロサンゼルスに立ち寄り、石灯籠の周りに集まり士気を高めたといわれている。現在、この歴史ある石灯篭は、人気のある「永久欠番」のモニュメントがあるトップデッキ入り口の中心に設置されており、ファンはドジャースの歴史と日本球界との友好の物語に触れることができる。
この壮大なスタジアムには、多くの魅力が詰まっている。ジェニーさんにとってのお気に入りはどんな場所だろうか。「ドジャースタジアムはメジャーリーグで3番目に古いスタジアムとして知られています。野球の興奮と伝統的な存在感が融合していることが、この場所を夢のあふれるテーマパークのように輝かせている大きな理由です。私のお気に入りのスポットのひとつは、トップデッキです。なんといっても、ここから一望できるロサンゼルスのスカイラインは、昼はもちろん夜景もダイナミックで本当に美しい」
2025年シーズン、このドジャースタジアムでどんな歴史が紡がれるのか…。また新たなストーリーがここから生まれてくるに違いない。

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