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Vol.4 ▶︎Nick Dの現在地 37.5マイル地点のジョシュアツリー
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目の前には、地平線まで続く荒涼とした大地。平地から見る地平線までの距離は、5km程だと聞いたことがある。丘に登れば当然その距離は長くなる。眼の前に広がる荒野。その遥か先にある地平線までの距離は、とても5kmとは思えない。一歩、また一歩と足を前に運んでいれば、いつかは目的地に辿り着けることは分かっている。ただ、何千年、何万年と変わること無く、只そこに存在し続ける荒野は、来る者を拒むような圧倒的な威厳を放っている。 バックパックからは二本の青いチューブが突き出している。ハイドレーションパックに繋がる長いストローだ。左のストローはカロリー補給用の粉末ドリンク。右のストローは何も加えていない真水。2つのパック合わせて、4.5リットルほど準備した。ここまで約8時間、これを交互に飲み続けてきた。粉末ドリンク入りの液体はかなり甘い。よって、カロリー補給後は水で口直しをする。ドリンクの他にもジェルや、エナジーバーを持参している。ジェルは走りながら摂るが、エナジーバーは暫しの休息時に止まって食す。パサパサしているので、乾いた喉に詰まりやすい。地面に腰を下ろしてエナジーバーを食べていると、例のごとくミツバチがやってきた。ふっと気がついた。ミツバチの多くは、地面に座っている時に群がって来る。不思議と立って休んでいる時には気にならない。砂漠で紅一点の花を咲かせるサボテン。これまで見てきたものはどれも背丈が低い。「そういうことか」。座り続けていると、ハチまみれになりかねない。仕方なく疲労した体を持ち上げ、立ち上がる。ここは彼らの地であり、よそ者は私の方だ。追い払う訳には行かない。 相変わらず人は疎らだ。時折ハイカーとすれ違う。中間地点を超えてからの後半で三組。挨拶を交わすのみで、立ち止まって話をするわけではない。それでも不思議な安堵感を与えてくれる。ここまで来れば、道に迷うことはない。残すところ数キロ。未だ陽は高い。疲れはあるが、それを誤魔化す術は身につけている。足にマメができた様子はない。膝も耐えている。右脚の付け根も大丈夫だ。 奇妙な形をした枝が、強風に煽られ揺れている。絶滅の危機に瀕するジョシュアツリー。揺れる枝は、巨人が手招きをしているように見える。招かれるまま、木の傍に行き、その声に耳を傾ける。南西からの風に乗って、囁き声が聞こえた気がした。「命ある物を愛でよ。限りある物を大切にしろ」と。
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9時間52分44秒でゴール!
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早朝5時半にスタートし、60kmの荒野を駆け抜け、今回のチャレンジの最終目的地であるノースエントランスに辿り着いた。時間は午後3時を少し回っている。未だ日差しは強い。所要時間は9時間52分。目標時間とした10時間を僅かに下回った。然し、それに大した意味など無い。自らの足でジョシュアの荒野を駆け、モハビ砂漠の過酷な自然を体感した。予期せぬ脚の痛みや、不安もあった。然し、それらを克服し、逆境さえも楽しむことができた。 大事には至らなかったものの、思わぬ誤算もあった。12時間分として用意した4.5リットルの飲料水。ゴール時に残っていたのは僅か300ml。ゼロに等しい残量だ。春でも気温40度に達する日もあるモハビ砂漠。2週間ほど天気予報を日々チェックし、一番気温の低い日を選んで、今回のチャレンジに臨んだ。その甲斐あって、今日の最高気温は25度に達していなかった筈だ。それにも関わらず、予想以上の飲料水を要した。もし、途中で道を間違えていたら、と考えるとゾットする。次回、砂漠に足を踏み入れる前に、雨乞いの術を身につける必要がありそうだ。
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トレイル上には「トレイルマジック」と呼ばれる飲み物や食料が置いてあることがある。ハイカーへの粋な心配り。

Nick D (ニックディー)
コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈け回る毎日。「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。
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