食べることで受け継ぐ、日本の智慧 |べっぴん塾

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第九十八回

食べることで受け継ぐ、日本の智慧

先週号では、同じ形を永遠に保つための智慧が「神様のお引っ越し」にあることをお話ししました。どれほど堅い石であっても、時を経れば少しずつその姿を変えていきます。しかし、同じ方法で同じ形につくり替え続けることで、その形を永続的に保つことができるうえ、そのつくり方も絶えることなく後世に伝えることができます。

実は、日本の年中行事にも同じ役割があります。日本の伝統行事の主目的は、神様をもてなして感謝を伝えることですが、その為に毎年同じ行事食を作り続けています。例えば、お正月には地域で採れた食材をつかってお節料理をつくります。新年とともに各家にお越しになる歳神様にお節料理をお供えし、今年の恵み(食材)の報告と、恵みを与えてくださったことヘの感謝、そして、来年の豊作をお願いします。その後、お供えした料理を神様と一緒に家族揃っていただきます。

行事食の主目的は、神様へのお供えですが、毎年同じお供えを続けることで、自ずと地域の伝統食とその調理法を継承することができます。日本は南北に長い国ですから、北と南ではずいぶんと気候が違います。寒い地域では体を温める食事を摂ったほうが、また、暖かい地域では、体にこもった熱を外へ逃がしたり、体温を下げたりする食事のほうが、体への負担を和らげることができます。日本の伝統食は、北へ行くほど味付けが濃くなる傾向があります。それは、厳しい寒さの中でも体を温め、元気に生きることができるよう生み出された、先人の智慧なのです。

季節ごとの行事食にも、先人の智慧が受け継がれています。夏は暑さが厳しく、食べ物が傷みやすいため、夏の行事食には、体内の熱を冷ますような調理法や、殺菌作用をもつ素材を用いたものが見られます。
行事食は、日本の食養生の文化を次世代へ伝える機会のひとつとなっているのですが、近年は、お節料理も百貨店などで購入することが一般的になりつつあります。便利になった一方で、地域ごとに受け継がれてきた食養生の智慧や、その土地ならではの食文化が失われていくのではないかと気になっています。

(11/4/2026)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

 

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