【ロサンゼルス3日】K-POPタレント事務所最大手のひとつ「JYPエンターテインメント」が2022年に企画した北米拠点の5人組ガールズグループ「VCHA」で正式デビューしたロサンゼルスのキエラ・グレイス・マダーさん(17)がこのたび、児童労働法違反や虐待、搾取があったとして同事務所を相手取る訴訟をロサンゼルス郡上級裁に起こした。
物心ついた時からK-POPのサウンドや振り付け、衣装の大ファンだったというマダーさんは、「JYPエンターテインメント」が北米拠点のグループを作る計画に飛びつき、リアリティ番組のオーディションを受けて合格し、他のティーン5人とともに「VCHA」に参加。しかし、正式デビューから一年も経たない昨年の夏、グループは活動中止となった。
”KGクラウン”という芸名で活動してきたマダーさんは、昨年12月に「JYP USA」を相手取りロサンゼルス郡上級裁に提出した訴訟の中で、VCHAを脱退したことを明らかにし、児童労働法違反、虐待、搾取を主張した。
これに対し「JYP USA」は、マダーさんが「虚偽かつ誇張された主張を含む一方的な公的声明」を出したと主張し、訴訟が起こされた際にソーシャルメディアで声明を発表。タイムズ紙の取材に対しては、現在進行中の法的問題であることを理由に、それ以上のコメントを避けた。
マダーさんがJYPと契約を結んだのは15歳の時。「VCHA」はリハーサルのために同社のソウル本部とロサンゼルスを行き来し、激しいトレーニングを行なった。ロサンゼルスでは、6人の少女たちは250万ドルのビバリーヒルズの豪邸を共有し、マダーさんは、メンバーが常に監視下に置かれていたと主張している。訴えによれば、その家に滞在することは「任意」だったが、マダーさんはJYPのスタッフからそこに住むよう強いるプレッシャーを感じたという。
また、マダーさんによれば、少女たちを監視する住み込みのスタッフに加え、ビデオカメラが彼女たちの私的な会話を監視し、記録していたという。訴訟では、同社がカメラを設置した際、家の警報システムの一部と偽って説明したと主張。会社が研修生らのスケジュールを完全管理し、週末に親と会うにも許可が要ったという。
マダーさんの訴状ではまた、「JYP」が自分の食事を管理し、食べる量を減らすよう圧力をかけたと訴えており、食事は「小さなサラダに制限」され、体重も監視されたと主張する。公演に向けたリハーサルでは食事や水を取るための休憩も許されず、ほとんど睡眠をとらずに長時間働かされたと主張。けがを負った後もトレーニングの継続を強いられ、休憩なしの過酷な練習で肩の腱断裂を引き起こしたと主張している。
訴状によると、トレーニングのストレスがたまり学校を休みがちになり、グループの他のメンバーは摂食障害を発症し、自傷行為に走るなどし、昨年2月にはそのうちの1人が自殺を図ったという。マダーさんは、2024年5月にグループを脱退して以来、「VCHA」の仲間とは話をしていないという。
訴訟では、「JYP」側がマダーさんに低賃金を支払い、約束した印税とグループからの収入の分け前を提供しなかったことも訴えている。
この訴訟の次の審問は20日に予定されている。