今、若者の間で一番人気の桜の花見スポットは何と言っても目黒川沿いではないか。普段はオシャレなお店や閑静な住宅地が隣接する山の手の街だが、この時期このエリアには、4キロに渡って800本もの桜が咲き誇り、300万人以上の花見客が訪れ、大変な賑わいをみせる。かつてはお花見時期になると、報道の定番は「上野公園の桜の下の陣取り合戦」だった。新入社員がブルーシートを手にいち早く席を確保するシーンをよく見たものだが、現在ではパワハラ問題になってしまうのか、その姿は消えている。そもそも桜の下での宴会や、お酒を飲みながらのどんちゃん騒ぎも少なくなってきた。
私、話題の目黒川にお花見に行ってきました。ドン・キホーテ中目黒本店があり、この時期は本社の2階テラスにお花見が出来るスペースが設置される。桜は下から見上げるものと思っていたが、満開の桜と目が合う不思議な気分にさせてもらい大満喫。テラスからは見物客の姿もよく見える。川沿いの道路を歩くだけで基本的には休む場所は無い。上野動物園で人気のパンダを見ながら歩く感じなのだ。立ち止まってお酒を飲んでいる人も皆無。ここでは桜の下の大宴会は出来ない。その代わり桜をバックにポーズを撮る人々のオンパレードとなっている。
若者の間で目黒川の桜が注目され出したのは、恐らくここ20年位では。当時、川沿いにカフェや洋服屋さんが出来始めたなと思っていたら、その後数年で大人気スポットに。それを決定づけたのは2019年にオープンした「スターバックス・リザーブ・ロースタリー」だった。通常の店舗と違い、焙煎機を備えた高級店。世界で5番目の出店で、コーヒーを焙煎する工程を目の前で見ることが出来るのを売りにしている。連日、外国人観光客も含め、押すな押すなの大盛況。当然お花見客で大行列が出来る事に。そうなんです。「桜の下の酒や団子より、スタバでコーヒー」の様相を呈している。時代は変化している。
それにしても、この時期の中目黒界隈の混雑は凄まじい。駅の改札口を出た所から大混雑。警備員の声も勇ましい。優美な気分で桜を楽しむ気分には中々なれない。まるで暮れの築地で買い物をする気持ちになってしまうのは私だけなのか。それでも目黒川の桜を堪能したいなら早朝がおすすめ。人もまばらで、川面に映る桜は絶景なのだ。更に桜の散る時期は川一面が桜色に染まり、花いかだの美しさには息をのむ。スターバックス開店前が一番の見所タイムなのです。いつかは早朝の目黒川の桜見に来ませんか。待っていますヨ。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

