大学時代の友人に会うため、久しぶりに京都に行って来た。年始めの同窓会に各地から旧友が京都に集合し大変な盛り上がりを見せた。普段なら食事をするだけの集いだが、その後に豪華にお茶屋に向かう事に。「一見さんお断り」の由緒あるお店、京都在住の地元で名士の学友のおかげで有難い事に入ることが出来た。お茶屋までの道中も祇園の街も観光客で凄い混雑。人波をかき分けやっとのことで到着。しかし一歩暖簾をくぐるとそこは別次元。元禄時代から続く格式ある佇まいは、江戸時代にタイムスリップしたと思える静寂さ。きしみ音のする階段を上り私達は2階のお座敷に案内された。
暫くすると襖が開き「おいでやす」の挨拶で静々と登場した舞妓さん、芸妓さんに一同大歓声。お酒も飲めず、遊び方も知らない私は失礼にもいきなりの質問攻め。「どうして舞妓さんを志したの」「出身地は何処」「修行は大変では」「辛いことは」「将来の夢は」と場の空気も読まずにまるで芸能レポーターのように矢継ぎ早に聞いてしまった。二人は嫌な顔ひとつせずにおっとりとした祇園言葉で答えてくれた。
芸妓さんは高知、舞妓さんは茨城の出身で、共に中学時代に「都をどり」を見てこの道に入ろうと決意したそう。これって甲子園を見て将来プロ野球の選手になりたいのと一緒じゃないか。動機がわかり易くていい。祇園言葉を覚えることはとても大変だったようで、特に東北育ちにはイントネーションで苦労するらしい。困惑するのは、各お茶屋に向かう道中や横断歩道待ちで外国人観光客に強引に写真を撮られる事のようだ。
心配なのは、舞妓さんのなり手が年々減少している事と顔を曇らせた。祇園甲部の舞妓さんは数えるくらいしかいないらしい。3年から5年の舞妓時代を経て芸妓さんになるのだが、先ずは舞妓さんになるための見習い期間として1年の仕込み時代があり、この時に辞めてしまう少女も多いそう。この4月に沢山の新人さんが入ってくれるのを期待していると、その表情は真剣にそのもの。
話を聞いて俄然関心が湧いてきた。応援したくなる。お茶屋に行ける身分ではないが、舞妓さん希望者がそんなに少ないのは困る。日本文化の継承を手助けしたい。宴の最後は先輩芸妓さんの三味線の音色に合わせて2人の舞いを見せて貰った。これが素晴らしく美しい。格式ある座敷で見ていると、まるで討ち入り前に祇園で遊興した大石内蔵助になった気分に。この奥深い遊びこそ日本の伝統文化に違いない。
如何ですか、貴方の周りに舞妓さん、芸妓さんに興味のある方はいらっしゃいませんか。先ずは4月に京都で開催される「都をどり」を見に行きませんか。人生変わりますよ。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。