私のせっかちは治らない

 スターバックスの店内でコーヒーを飲んでも10分も居られない。飲み終わるとすぐに店を出てしまう。夏場はアイスラテをオーダーするが、熱いコーヒーより早く飲み終えてしまうので更に滞在時間は短い。ファミレスでも行動パターンは変わらない。レストランに行っても料理が来ると次の料理が早く来ないかとつい調理場の方に目が行く。焼肉屋、回転寿司のように自分のペースで食事が出来る方がイライラしないで楽しめるので、どうしてもそんなお店を選んでしまう。昼時の混雑の中、席待ちをしている人の姿を見るだけで、席を空けてあげないと、と急いで食べてしまう。ひどい時はレジでまだ口をモグモグしながら精算することもある。要はせっかちなのだ。スタバに2、3時間居るなど、同じ場所にずっと滞在できる精神力の持ち主は尊敬に値する。

 料理を注文する時にはメニューを見た試しがほとんどない。お勧め料理か、写真の載っている料理に指をさし「お勧めは?」「コレお願いします。」とオーダーする。ひどい時はとりあえず一番早い料理をお願いする。スペイン料理のパエリアなど、1時間以上掛かる時はよっぽどの覚悟が必要だ。振り返っても、スタバ15分、ファミレス40分、レストラン1時間45分が平均時間だ。店側から見ると回転率が良い客に思われるかもしれないが、とはいっても褒められることではない。回りの目を気にし過ぎたり、落ち着きが無いだけ。

 料理だけではない。好きな洋服を選ぶ時もじっくりというより瞬間のひらめきで決めることが多い。若い頃は女性を見る目もせっかちで即決していた。付き合ってみて「え?こんな子だったの?」とびっくりしたことも。一見清楚な子だと思いデートに誘ったところ、大の辛い物好きで、My七味、Myタバスコを持参し、日本蕎麦屋では天ぷらうどんの天ぷらが見えなくなるほど七味を掛けまくり、ピザ屋ではクワトロチーズピザがタバスコで真っ赤な海になった。知り合ったばかりなので注意することもできず茫然と見つめるだけだった。その後キッスのチャンスもあったが彼女の胃液から逆流する匂いを想像して早々と別れた思い出がある。

 話を元に戻そう。では何故私がすぐに店を出てしまうのか。その原因を周りの友人に聞いてみた。「テリーさんはお酒飲まないからひとつのお店に居続ける環境に慣れてないからだよ。」と冷静な答えが返ってきた。確かに。夕方から夜中まで飲んでいるという話はよく聞くが、私は2時間程で早々帰ってしまう。今更酒を飲めるようになれる訳もなく、今現在八方塞がりの状態だ。私の試練は続く…。

 

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■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

 

 

 

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