桜はずるいのか

日本列島桜満開!! 各地から届く便りはまさに春爛漫!全国的に新型コロナウイルスまん延防止等重点措置の全面解除でホッとした気分なのか、桜名所は大変な賑わいだ。お花見する人々はみんな笑顔。桜の下で家族連れがお弁当を食べている。恋人達が肩を寄せて写真を撮っている。同僚達が盛り上がって話している。桜がみんなの心に幸せを運んでくる!

そこに異議を唱える女性が現れた!!  現在『テリー土屋の車の話』(MXテレビ放送)の番組で司会を担当している吉竹さんだ。それは突然だった!本番の打ち合わせ前に「桜ってずるくないですか!」「ちやほやされ過ぎじゃないですか。」「女出し過ぎですよね。」と言い出した。

 

 

私、余りの出来事に意味が分からなかった。皆に愛されている桜が嫌いだなんて、きっと過去に桜の下で彼氏に振られたのだろう。それで逆恨みしでいるのではと思ったのですが・・・

話を聞くと彼女なりのユニークな美学と桜感があった! 「桜って恵まれ過ぎていませんか。咲く前から気象庁の人が靖国神社に足を何度も運んで標本木を観察し、開花するや否や各局テレビも大々的に報道する。咲き方も気にいらないんです。私を見て、綺麗でしょ、可愛いでしょ、を全面に押し出して遠慮がない。」「夜は夜で妖艶にライトアップされて。」

吉竹さんの熱き思いは止まらない。更には「短い期間しか咲かないのに大量の花びらを地面に撒き散らす。春の嵐がくれば掃除が大変なのに。散り際も本当にわがまま。」ビックリしました!桜に対してこういう考え方もあるんだと。

でも面白いではないか! 「それに引き換え・・・」と吉竹さんが言い出した!「梅って可憐ですよね!寒さ厳しい2月に花を咲かせても、人々は目を留めること無く下を向きながら歩く。誰にも気づかれずに健気に咲いて誰にも気づかれず散っていく。」そうか!確かに梅に対して私も邪険にしていたかもしれない。寒さの中頑張って咲いても、もうすぐ桜が咲くねと、失礼なことに梅本人の前で桜の話をしているのだ!

桜の花びらをモチーフにしたケーキは山ほどあるのに梅の花のケーキは余り聞かない。梅干しや梅酒はあるが。桜と梅の文字を比べてみた。「さくら」は三文字で響きも可愛いが、「うめ」は二文字で少し古臭く聞こえてしまう、これは厳しい。歌の題材も、福山雅治『桜坂』、森山直太朗『さくら』、コブクロ『桜』、坂本冬美『夜桜お七』始めきりがない。それに引き替え梅をテーマにした歌が思い浮かばないのだ・・・。

私反省しました。来年こそ梅の開花から見てやらないと!それにしても吉竹さんの着眼点は本当に面白い。今度また話を聞きに行こう。

 

 

■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

 

 

 

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