2020東京オリンピック 開会式の評価は

観ましたか!オリンピック開会式。演出家として私もこの日をとても楽しみにしていました。無観客なので当然NHKのテレビ観戦です。

 


午後8時に画面は国立競技場の夜景を空撮で写し出した。聞こえてきたのは『ニュースウオッチ9』の和久田麻由子の声だ!これが抜群にいいのだ。神宮外苑の空に美しいビブラートの響き。ダチョウ俱楽部的に言うと「つかみはOK!!」。そして開会式がスタートした。

 

ワクワク感を膨らませながら見だしたのだが、これが何とも普通なのです。パフォーマー達が躍動感ある踊りをしているのだが、何処かで見覚えがあるような気がした。プロジェクションマッピングも驚きはない。気が付くと選手入場。最後に主催国日本が入ってきた。

 

私が落ち込んだのは日本選手団のユニフォーム。色こそ日の丸をモチーフにした赤と白だが、シルエットはまるで通勤電車のサラリーマンじゃないか‼インパクトのないデザインと軽量冷感素材もまさにサラリーマンだ。こんな感じで山場の無いまま開会式は終わっていくのかと思っていた…が、終盤の演出でやってくれた!

 

東京大会のデザインをモチーフにしたドローン1824個で形成された物体はUFOを彷彿させる。凄い!更に各競技場種目のデザインをパントマイムで素早く決めていく「ピクトグラム」には、競技場にいる選手も大喜びだ!

 

続いて聖火ランナー。あの長嶋茂雄が、王貞治、松井秀喜と共に登場した。実は長嶋さんが聖火ランナーになることは数年前に聞いていた。長嶋さんはこの日の為に何年間もリハビリをしていたのだが、医師から週2回で良いと言われていたのに週5回も通っていたという。何としてでも聖火ランナーになる執念だ!ゆっくりとした足取りを「痛々しい」と捉える人もいたと思う。私自身も距離が長すぎると一瞬思ったが、それは過ちだった。この距離こそが大切なのではないかと感じた。

 

日本人は街で障害のある方と出会っても凝視する事はあまりない。むしろ失礼になるのではないかと目を逸らすことが多い。長嶋さんの歩く姿を見て、これからはもっと障害のある方と向き合って行こうと強く感じた。私にとっては、長嶋さんの聖火ランナー姿を見ることが出来ただけで開会式は成功に思えてくる。

 

次の時代の話をしよう。いつの日か開会式を昼に戻してはどうだろう。そうなるとプロジェクションマッピングは使えないし、照明も使えない。そうなんです、ハイテクマジックが使えないのです!本当の意味で演出家の実力が試されるだろう。

そんな演出してみたいな! 待てよ、次の日本オリンピックか~。実現する前に死んでるかも知れないけどね!

 

 

 

■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

 

 

 

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