私、毎週月曜日の朝はニッポン放送での生放送の仕事がある。終わるのは9時半過ぎで、その後近くのコーヒーショップでコーヒーを飲むのがルーティンになっている。この4、5年はスターバックスでカフェラテを注文している。皆さんもご存知のようにスタバは何となくスタイリッシュな感じがする。スタッフの対応も爽やかだ。お店に来ている客層もお洒落。2時間くらいパソコンを広げて仕事をしている風景も当たり前になっている。
ましてここは丸の内、一流企業の若手社員が多く集う。セレブな風が流れるが…おっさんがいないのだ。竹野内豊や小泉進次郎みたいなサラリーマンはいるのだが、少しくたびれた泉谷しげるや中尾彬がいない。
これはまずい。一体彼らは仕事をサボって何処でコーヒーを飲んでいるのだろうか。
その答えは直ぐにわかった。隣のビルにある「喫茶室ルノアール」にいたのだ。
ここはいい!昭和を感じさせるちょっと古臭い内装と、何時間居ても絶対に疲れないと思われるおそらくIKEAでは絶対に売っていないゆったりとした椅子もある。さらに会話を邪魔しないストリングスのBGMが心を豊かにしてくれる。
きっとお父さん達が若かりし頃、喫茶室ルノアールで恋人と待ち合わせて、ドキドキデートしたのでは。私の妄想がまた始まった。ルノアールから日比谷の映画街まで歩き、当時流行していたフランス映画「シェルブールの雨傘」を鑑賞していた事も容易に想像できる。しかし最大なるイベントは映画の後の食事だ。店選びに失敗は許されない。映画を見ながらも、頭の中は次の作戦でいっぱいなのだ。さらに、本当のイベントは夜も10時も過ぎのここから。どうやって暗くなっている日比谷公園まで他愛もない会話をしながら彼女を連れて行くかだ。私も経験があるので分かるのだが、とりとめのない会話は長くは続かない。何度失敗したことやら。公園に行けばキッスが出来る可能性が非常に高くなるのだが…。
話を戻そう。そうなのです、ここルノアールは今もなお居心地が圧倒的にいいのだ。店内を見渡すと、群れに入らなさそうな、スターバックスに背を向ける若い女性(私が見たのは35%北川景子似)が多いのも何かわかるような気がする。
嬉しいことに昔ながらのモーニングサービスがあるのだ!私の大好きなバタートーストと卵、スープ、勿論コーヒーも付いてスタバと値段が余り変わらない。これは皆さんも一度行く価値はありますよ!ノスタルジーのつもりが素敵な恋と出合えるかも!
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。