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北野正寛 Masahiro Kitano
Ikasu Brewing 創業者/醸造責任者
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「僕はもともとがん細胞の研究者で、魚を使って数ヶ月かけて観察する日々を送っていました。けれどコロナ禍でラボに来てはいけないとなった。それまで取り組んでいた実験もすべて止めなければならなくなった。その時、自分は何をやってるんだろう、これを一生やっていくんだろうかという気持ちが芽生えました。それが会社を創業するきっかけになった人生の転換点です」2025年1月にIkasu Brewing LLCというビール会社をLAで創業した北野正寛さん。研究者からビール会社創業者に転身した経緯とは。彼の半生に迫った。
1980年北海道美瑛町出身。父は郵便局員、母は給食調理員で、2つ下に妹がいる。幼い頃から勉強はできた。自分の得意分野は理系だと自認していたが、医学部にも工学部にも興味を持てず、京大薬学部に進んだ。与えられた課題を解くことは得意で、学部卒業後、同大学院薬学研究科の修士課程を修了。医学部には潤沢な研究資金があるが薬学部にはそれが乏しい構造に気付き、博士課程は軸を変えて大阪大学大学院医学系研究科に進んだ。資金も十分で、思う存分研究ができて満足だった。その後は理化学研究所にて研究員として勤務。順調な研究者人生を進んでいた。
2012年渡米。研究者として一皮剥けるために敢えて環境を変えることを選んだ。やっている内容が変わる。言語も変わる。場所も変わる。北野さんにとって新しい挑戦だった。南カリフォルニア大学のがん研究ラボに所属し、プロポーザルを書き、研究資金を獲得し、自身の生活を支えながら研究生活に邁進。そのラボで運命の出会いが。ビール製造が趣味だった英国人のラボメイトはなぜか自分の家ではなく北野さんの家で「ビールを作りたい」と申し出た。二人でEagleRockのホームブリューワリーショップに材料を買い出しに行った時のことを北野さんは鮮やかに憶えている。「麦のにおいに感動しました」
それが起点となり、研究者の仕事の傍ら、クラフトビール醸造に傾倒していく。ビールを作っては友人知人にふるまう試行錯誤の日々。しかしこの時のビールについて「美味しくなくて気にいらないと思っていました」と語った。彼の目指していたビールはもっと先にあったのだ。努力は花開く。60以上のビアコンペで受賞し、BJCPナショナルジャッジ及びアドバンスト・シセロン資格を取得した。コロナ禍でラボに行けない日々が突如訪れ、研究者人生を歩むことに疑問を覚え始めた頃、自身のビール作りで勝負したいという気持ちが芽生えたのは自然な流れだったといえる。それは自分の舌を満足させるビールができたことも大きかった。「日本の素材を使い、日本人のクラフト精神で繊細に仕上げています。ぜひ飲みに来て下さい!」


(8/14/2025)
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