世界で一番美しい車 シトロエンC6がやって来た

 また車を購入してしまった。自他ともに無駄遣いの王様と認めている通り、また、やりました。新たな愛車はフランス生まれ「シトロエンC6」2007年モデル。世界で最も美しいセダンと呼ばれ、ニコラ・サルコジ第23代フランス大統領も専用車として使用していたというフランスを代表する車。当時販売価格は750万円のまさに高級車。その美しいフォルムを世界中が絶賛し、私もいつの日か欲しいと思っていた。

 月日が経ち、なんと、憧れのC6が知り合いの横浜の車屋さん「AZauto」に並べられているのを発見した。かつて世界で最も高貴でエレガントな佇まいと言われたC6が、他の欧州の小型車や大衆車と一緒に置かれ寂しそうにいるではないか!実はC6は華々しく欧州の社交会にデビューしたにもかかわらず、シトロエン特有の乗り心地機能、ハイドロシステムが複雑なためか人気が出ず、生産年月も2005年~2012年のわずか8年と短命に終わった。そんな物語を知っているので余計野ざらし状態に置かれたC6が愛おしく見えた。

 フロントガラスに貼られた180万円諸経費込みのプライスにびっくり。当世人気中古車は販売価格より高額で売買されるケースも多い中、隣に置かれた同じフランスの超大衆車シトロエン2CVと価格が変わらないじゃないか。社交界の貴婦人C6と下町娘2CV。17年の歳月を経て2台がここに並んで居るとは。C6はどんな気持ちなのか。こうなったら私が引き取るしかない。早速購入する事に。

 担当の児玉さん曰く「壊れやすい車なのでくれぐれも優しく接して下さい。出来ればサンルーフも開けない方が良いです。それとカップホルダーも繊細なので利用は控えめに。壊れると部品調達が難しいので。」普通ならアドバイスにたじろぐところだが、長年古い車に乗っているため、この程度の事は織り込み済み。

 納車後、早速ドライブ。パリジャンを気取って赤いベレー帽とフランス製のホワイトコートで決め、横浜までひとっ走り。不思議なくらい順調。シトロエンが誇るハイドロも機嫌が良い。車内に流れる音楽は当然フランスのシャンソン歌手シャルル・アズナヴール。幸せな時間を過ごす事が出来た。しかし翌日、車に乗り込もうとドアーの取っ手を見ると、親指を掛ける部分が消えている。昨日のドライブ中に恐らく飛んで行ったのだろう。しかし動じない。あくまでも想定内の出来事。幸いパーツが見つかった。

 貴婦人シトロエンC6との付き合いは始まったばかり。なにがおきるか分からない。楽しみは尽きない。

 

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■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

 

 

 

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