車好きの私、またまた購入してしまった。通称クラシックレンジと呼ばれている1991年式英国レンジローバーです。YouTubeロケで出会い一目惚れ、何か月か迷った末買いました。迷った訳は、お店のオーナーに購入を考えていると言うと「テリーさんこの車苦労しますよ、30年以上前の車だし。イギリス車は基本的にはよく走るのですが、マイナートラブルが多くて。」といきなり盛り上がる気分に水を差すお言葉。とてもお店のオーナーとは思えない返事が返ってきた。少し萎えたが気を取り直して、どの辺が故障になるのかを聞くと「電気系統かな。その他諸々。」の大雑把なお答え。しばしお互い無言。そのまま静かに帰宅した。熟考の日々が続く・・・。
一目惚れしたレンジは普通とは違った。オリジナルを重視した車が多い中、前オーナーがボディーカラーをベントレーの純正ブルーに塗替え、内装も真っ赤な超派手な皮張りに替えている。保守的なレンジファンから眉をひそめられる佇まいなのだが、私にとってそこが良い。問題はトラブル対応が出来るかということ。メカに弱い私には大きな課題だ。現在乗っている国産EV車はよく出来ているのだが面白みに欠ける。決断は早い。「そうだ!もう一度車で苦労をしてみたい。」ここからは早かった。4日後には国産車を売却し、遂に念願のレンジを手にした。
浮き浮き気分の納車日に、店のオーナーから再び「エンジンをかける時にはキーを回して15秒経ってから。冬の暖機運転は忘れずに。パワーウインドウはゆっくりと上げ下げしてください、急にやると壊れる場合が。ドアの開閉も静かにお願いします。電気系統が弱いので冬の雨の日は注意が必要。ヒーター、ワイパー、ライトでバッテリーを大量に消費しますので…。」のお言葉。30年以上前の英国車の納車式、とても晴れやかとは言えない重い空気になったのだが、私めげない。
乗ってしまえば気分爽快!そのまま海に向かって突っ走る!これが至極快適。エンジンも調子良く、レストアされた外観も新車のよう。海沿いの134号線はレンジが似合う。鎌倉の駐車場では車好きのオーナーが声をかけてくる。湘南デビューは大成功となった。
至福の時、あのオーナーのアドバイスを忘れかけていた3日後、最初のトラブルが。助手席のウインドウが下りないのだ。そして集中ドアロックが効かない。慌ててオーナーに連絡をとったら、落ち着いた声で「テリーさんスイッチを強く何度も押して下さい、動き出しますから。」の指示。しかし直る気配はなく・・・現在車は整備工場に長期の入院中。私とクラシックレンジの生活は始まったばかり。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。