アメリカに住む日本人のためのサービス 助けるだけでなく寄り添う存在でありたい

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加藤由佳
Yuka Kato (リトル東京サービスセンター)

カリフォルニア州公認心理師

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■カウンセリングの様子。
リトル東京サービスセンター社会福祉部の電話番号: 213-473-3035

「現在目指していることは、南加州に住む日本人のために日本語を話す専門家による助け合いの輪を広げることです」今年創設43年を迎えたリトル東京サービスセンター(LTSC)は、日系社会で助けを必要としている人に社会福祉を提供する非営利団体。加藤由佳さんはここでセラピストとして働く、勤続年数15年超のベテラン。眼鏡の奥に見える瞳は凛として、それでいて優しい。

 栃木県佐野市出身。実家は代々続く薬局で3人きょうだいの長女。初孫ゆえ非常に可愛がられた。小学校時代は目立ちたがりの努力家で成績優秀。学級委員長や学芸会の主役を務め「自分は特別だ」と自惚れていたが、思春期にはクラス全員から長期間無視される陰湿ないじめを受けたりもした。「その当時私を支えたのは自尊心でしたが、一方で孤独な気持ちは他人を見下すことで誤魔化していたと思います」と加藤さんは語る。

■邦人支援に携わる専門職の仲間たちと対面で勉強会。

 渡米のきっかけは高校3年の時。バイリンガルのニュースキャスターになる事を夢みて生徒会や放送部の活動に忙しくしていた加藤さんはある日、受験に備えて志望校の赤本を手に取ってみた。広範囲を網羅した勉強をする必要があるのに、実際の出題範囲は非常に狭かった。そこに矛盾を感じ「こんな閉鎖的な入試で私の人生を決められたくない」と留学を決意。ジャーナリズム学部のあるネバダ州立大学リノ校を受験し、見事合格。1年目は東京のキャンパスに通った。英語での授業と都会での一人暮らしは慣れ親しんだ環境を離れる準備となった。翌年いよいよリノの本校に通うため、満を持して渡米。

 ジャーナリズムと政治学部のダブルメジャーで卒業後、LAにある日本語テレビ局でキャスターを7年勤めた。しかし夢を叶え、取材や番組制作現場での貴重な経験を重ねながらも過密スケジュールに忙殺され、私生活は空虚だった。やがて心の通ったコミュニケーションやセルフケアに興味が湧き、2001年心理学専門の大学院に入学し、2年後カウンセリング心理学の修士号を取得。院生時代にインターンをしたLTSCに卒業後そのまま就職し、加州公認資格も取得。彼女にとって新しいキャリアが始まった瞬間だった。

■去年の冬、4年ぶりに家族で「地球上で一番幸せな場所」へ。「それぞれが苦境に陥ったコロナ禍には、再び笑顔になれる日がくるとは思えませんでした」

 2022年から子どもと家族支援・邦人DV支援プログラムを任され、コロナ禍でより支援を必要とする邦人家庭に対し、日本語での専門的なサービスを提供している。「利他の精神に溢れる仲間と出会い、未熟な自分に気付き、成長できる環境に感謝です。今は種を蒔き、育て、花が咲くイメージで仕事ができています。セラピストは助けるだけの立場でなく、寄り添って共に影響し合いながら歩んでいく存在です」一人でも多くの日本人にLTSCのサービスを知ってほしいと願いながら、今日も加藤さんは働いている。

■外出は仕事か子供たちの行事関連のみだった加藤さんが、思い立って通い始めた和太鼓。雨のなか、LAマラソンの応援演奏をおこなった。「セルフケアの一環としてこれからも続けていきたいです」

(5/2/2023)

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