山田洋子: 古代から現代へ、発展と 進化を遂げるエンバーマー

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山田洋子
Hiroko Yamada

加州認定Apprentice Embalmer(遺体防腐技術士実習生)

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エンバーマーになるため、現在サイプレスカレッジのMortuary Scienceという学部で学んでいる。「文系の葬祭管理士と、理系のエンバーマーとの両方を学ぶので内容は幅広い。世界の宗教・慣習から社会学、心理学、カウンセリングなどを勉強し、ご遺族の方々との接し方を学びます。エンバーマーは、専門知識が必要な薬品を取り扱うので、解剖学や化学を含めた理系全般も学びます。最後のヘアメイクも課題の一つです。これらの勉強のほか、葬祭管理士は216時間、エンバーマーでは2年間のインターンがあります」
Eメール embalmer.la@gmail.com

 「よく『エンバーミングって何?』と聞かれます。エンバーミングは、亡くなった方の体内の血液を薬品と入れ替えることで遺体の腐敗を遅らせるという技術です。アメリカでは、南北戦争で戦死した兵士たちを遠く離れた故郷に運ぶまでの間、遺体の腐敗を防ぐために行われ、これを境に盛んになりました。土葬が主とされてきたアメリカでは一般的に知られている処置なんです」。このエンバーミングを行うのが、エンバーマー(Embalmer=遺体防腐技術士)の仕事だ。

 現在、山田さんはカリフォルニア州認定Funeral Director(葬祭管理士)の免許とCrematory Operator(火葬操作士)の修了書を保持し、アメリカの葬儀社に勤務しながらエンバーマーの免許習得を目指し、カリフォルニア州認定Apprentice Embalmer(遺体防腐技術士実習生)として経験を積んでいる。

Mortuary Schoolのクラスメートと教授。最後の総まとめのクラスで、National Board Examinationに向けての準備クラス。

 「エンバーミングは一般的に、ご遺体との対面があるお葬式の場合などに行われます。エンバーマーの仕事では防腐処置に限らず、事件、事故、病気などで顔や身体に損傷を受けてしまったご遺体や、検死解剖や臓器提供後に処置を必要とするご遺体の修復、化粧も行います。亡くなられた方が安らかにご家族との最期のお別れができるように、ご遺体を生前の元気だったころに近い姿にできる繊細な技術を提供する手先の器用さも求められます」。専門知識や技術はもとより、体力そして気力もこの職業への適応性として重要な点。遺体に触れて処置を施すことができるかどうか、また、家族を失い深い悲しみに打ちひしがれている遺族と接する精神的強さも大切といえる。

クラスでお世話になった恩師、ビヤ教授(中央)とその教授のスーパーバイザー・エンバーマーをしていた教授(右)。彼は現在UCLAにて臓器提供のプログラムを担当している。

 神奈川県横浜市出身。96年に渡米し、パサデナ・シティー・カレッジとカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校を心理学専攻で卒業。以前から「ライセンスが必要な専門的な仕事、世界の様々な国と繋がれるようなこと、誰もができないようなこと、人を助けられること、アメリカにいてする価値のあること」をずっと求めていた山田さん。ある日、読んだ一冊の本でエンバーマーのことを知り、「これぞ自分の求める仕事だ!」とすぐに学校を見つけて入学手続きをしたのが今からちょうど3年前だった。

「今後はエンバーミングと共に修復技術を高めていくことが目標です。はじめは狭くロサンゼルスから、そして西海岸、最終的には全米でもトップ3に入れるくらいのEmbalmer & Restorative Specialistを目指していけたらと考えています」

 エンバーマーの職業の奥深さや魅力をこう語る。「エンバーミングの起源は、古代エジプトのミイラです。当時は慣習や文化など芸術的要素が主でした。現代ではそれに科学が用いられ、アートとサイエンスこの二つの相対した要素の融合に深い魅力を感じています。古代ではミイラ作りは奴隷の仕事だったといわれていますが、長い年月を経て現代の21世紀では、免許が必要な非常に特殊でプロフェッショナルな職業にまで発展と進化を遂げている。私はここに深いロマンを感じると共に、エンバーマーを世界で一番クールな職業だと、誇りをもっています」

山田さんが葬祭管理士を務める葬儀社。

(11/21/2022)

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