アメリカ101 第102回
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(9月17日号から続く)博物館/美術館/ミュージアムが多いといっても、LACMA(ロサンゼルス郡立美術館)やポール・ゲティ美術館といった大規模な施設から、小さな一室のギャラリーまで含めると、その数が多くなるのは当然ですが、ロサンゼルスおよび周辺では、規模だけでなく、その特徴的な展示で優れています。中でも2023年開館予定の「ルーカス博物館」は、その斬新なコンセプトで世界的に注目を浴びているプロジェクトです。個々のモノの展示ではなく、「有史以来人類がどのようなメディアで、どのようなものを具象的に語り継いできたか」という視点を重視した「ナラティブ・アート」(Narrative Art)を網羅したミュージアム。現在世界で最も活躍する建築家のひとりで、北京の建築事務所MADアーキテクツを主宰する馬岩松が設計した、流れるようなフォルムの宇宙船を思わせる建物も見ものです。エクスポジション・パーク沿いの110ハーバー・フリーウェーをドライブする際、ちょっと建築現場に寄り道する価値があるでしょう。
「寄り道の価値」といえば、ロサンゼルス一帯で、「フランス印象派の絵画が好き」という向きには見逃せないミュージアムがオレンジ郡アーバインにあります。ここでいう印象派とは「カリフォルニア印象派」(California Impressionism)のことで、19世紀末から1930年代にかけて、最初はサンフランシスコ近郊、その後「サウスランド」とも呼ばれるロサンゼルスからオレンジ・カウンティにかけての一帯でのさまざまな自然の風景を描いた一連の画家集団を指します。ウィリアム・ウェント(William Wendt)、グランビル・レドモンド(Grannville Redmond)、ガイ・ローズ(Guy Rose)、エドガー・ペイン(Edgar Payane)らが有名で、フランス印象派/ポスト印象派に見られるような、「時代を切り開いていく」といった絵画史の転換期となるような力んだ流派ではなく、ひたすら、さんさんと降り注ぐ太陽に照らされた風景を緩く描いた画家たちで、「美しい具象風景画」好きにとっては必見です。
ロサンゼルスでのフランス印象派のコレクションとして知られるのは、パサデナにあるノートン・サイモン美術館(Norton Simon Museum)です。実業家サイモンが収集した美術品を主体の正統的美術館で、印象派絵画も充実しています(ちなみに2番目の妻はハリウッドスターのジェニファー・ジョーンズで、美術館理事長でもありました)。カリフォルニア印象派コレクションとしては、ロサンゼルス・ダウンタウンの社交クラブ「ジョナサン・クラブ」(Jonathan Club)や、歴代のガーディナ高校卒業生が卒業時に毎回寄付してきた一連の作品、そしてPCH沿いのラグナ美術館(Laguna Art Museum)などがあります。だが最大の宝庫は、オレンジ郡の大地主アーバイン一族のカリフォルニア印象派コレクションを展示するアーバイン美術館(Irvine Museum)(1993年開館)です。
当初は独立した美術館でしたが、2016年にコレクションが一括してカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)に寄贈となり、現在は同大学所属の「カリフォルニア絵画研究所・美術館」(Institute and Museum of California=UCI IMCA)の一部です。大学構内に新たな施設建設が予定されていますが、現時点では従来からのミュージアム所在地であるアーバインのAirport Tower Building一階(18881 Von Karman Ave.,Suite101 ,Irvine, CA 92612 )にあり、来年2月中旬までは「イメージとサウンドの共鳴が織り成すカリフォルニア絵画」(The Resonant Surface: Movement, image, Sound in California Painting)のテーマ展示となっています。カリフォルニア州在住者ならば是非とも知っておきたいカリフォルニア印象派の一端をうかがう絶好の機会ですので、お見逃しなく(詳細はimca@uci.edu)。
著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)
通称:セイブン
1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。
(9/24/2021)
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