東京オリンピックのソフトボールの決勝で日本はアメリカに2対0で勝ち、13年前の北京オリンピック以来となる金メダルを獲得した。今回もその中心にいたのが日本の絶対エース上野由岐子だった。これって凄すぎる!
北京大会の男子野球のメンバーには、あの松坂投手や巨人の上原投手がエースで出場していた。ご存知の通り今や二人とも現役を引退している。そしてこの13年間にロンドン、リオと二つのオリンピックでソフトボールは開催されていない。長い空白期間を上野はどんな気持ちで過ごしてきたのだろう。男子はオリンピックが終われば公式戦に戻り満員の観客の前でモチベーション保つことが出来るが、女子選手はそうはいかない。
北京大会の熱狂は一瞬にして冷め、その後カナダで開催された世界選手権で王者アメリカを下し、42年ぶりに優勝してもマスコミはほとんど取り上げなかった。いつ再びオリンピック種目でソフトボールが採用されるかもわからない大人の事情の中、何を目標に練習したらいいのか。アスリートには年齢の限界もある。しかし上野投手は13年の空白から戻って来たのだ!! これがどんなに大変なことなのか私たちには計り知れない。
スケジュールの都合上、開幕式の前にマウンドに立つことになった。これってどれほどのプレッシャーだろう。日本中が見ている。ファンは吞気だ。あの「北京の413」の再来を願っている。26歳だった年齢も39歳になっているのに。誰も松坂や上原には望まない、無理だと分かっているから。それなのに・・・この大重圧の中、私たちの期待に完全答えてくれた!北京大会の時の速球で押し切るピッチングではなく老練な投球で!上野はなんと素晴らしい女性なのか。
優勝後のインタビューで「努力すれば夢は叶う」と答えた。私思いました。この言葉、上野投手にしか言えない言葉かもしれないが、これからはこんなに良い人でいることはない。メンバーからいつも相談される立場に違いないので、自分を崩せないでいるだろう。ここからは好きに生きて欲しい!聞くところによると、スカイダイビングをやってみたいそうだ。住んでいる高崎から、東京に夜遊びに来て欲しい。もちろん恋愛もどんどん頑張って貰いたい!世の中の上野投手のイメージは「ストイックで近寄りがたい」かもしれないが、私も何度かお会いしたことがあるが、本当に優しい女性だった。これからはマスコミも彼女を選手として取り上げるのではなく、ユニホームを脱いだ姿を紹介したらどうだろう。
これからの人生、本当に幸せでいて欲しい。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。