【ロサンゼルスで暮らす人々】日系アメリカ人が培った信用の上に自分がいる

LA暮らし

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中村 有理沙
Arisa Nakamura

グラフィックデザイナー
『北米報知』で漫画連載中

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■中村有理沙さん
Instagram:@arisan_artworks
ウェブサイト:www.arisan-artworks.com

 「絵を描くことは昔から好きでしたが親に制限されていました。だから隠れて描いていました」ワシントン州シアトルの邦字新聞『北米報知』で漫画連載中の中村有理沙さん。なんと北米報知の前身である北米時事の設立は1902年で、邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。また彼女は今年の7月末までワシントン州日本文化会館(JCCCW)で8年間マーケティング兼デザイン担当職員として働いてもきた。どんな半生を送ってきたのだろう。

 静岡県出身。自動車関連で働く父と専業主婦の母のもとに生まれ、4つ上に兄がいる。7歳の時父の仕事の都合で川崎市に転居。小学生時代のお気に入りは『もののけ姫』で好きな場面を幾度も見てVHSテープが擦り切れた。「親の制限がかかればかかるほど逆に興味が増しました」と語るように、その枯渇が彼女の絵への欲求を高めたといえるかもしれない。

 小5の夏から突然自宅で受験勉強が始まった。「我が家は塾に行かずに、自宅でひたすら勉強するというスタイルでした」よって逃げ場がなかったそうだ。唯一食事の時間は勉強しなくても許されるのでゆっくり食べるようになった。「この時代に一生戻りたくないです」と語るほど壮絶な受験勉強だったことが窺える。その甲斐あって桜蔭中学校に見事合格。しかし受験勉強が終わって数ヶ月後、親の仕事でミネソタ州で4ヶ月間暮らすことに。英語がまったくできず、学校では自分の名前を言うのが精一杯。帰国後「帰国子女だから英語を披露してほしいと頼まれたりするのですが実際は誰とも話さなかったわけです」できるはずもなく、周りが自分に見る姿に合わせて英語を勉強するようになった。

 2006年日本女子大学へ進学し、住居学を専攻。途中、交換プログラムでボストンのウェルズリーカレッジに1年間アートを学びに留学。「絵を正面から勉強していいという自由は最高でした」興味の対象は次第に住居から街へ。2010年東工大大学院に進学し、参加型のまちづくりを専門的に学び始める。彼女の学びはそこで止まらず、卒業後はワシントン大学大学院に留学し、ランドスケープ学科で米国のグラスルーツ(市民の草の根活動)的なまちづくりを学び、さらに理解を深めていった。2017年からJCCCWで働き、絵の才能を生かし、デザイナーとして活躍してきた。「日系アメリカ人は米国で唯一強制収容されたアメリカ人。彼らが苦労して努力して培った信用の上に自分がいるわけです」日系アメリカ人へのリスペクトが感じられる言葉だ。シアトルの日本町の歴史を学ぶ『日系人ゆかりの地ガイドマップ』やベインブリッジ島の日系アメリカ人の強制収容の歴史教材の作成をしたのも彼女だ。「今後も絵や漫画を用いて表現の力を活かしていきたいです」

■ワシントン州日本文化会館こどもの日イベントにて漫画の描き方を教える(2018)©JCCCW
■中村さんが米国国立公園局と制作したブックレット。ベインブリッジ島の日系人たちの強制収容の歴史について学べる。©NPS

(9/10/2025)

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「【ロサンゼルスで暮らす人々】日系アメリカ人が培った信用の上に自分がいる」への1件の返信

  1. 雰囲気の感じられる素敵な絵ですね。
    応援しています。

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