
こんにちは!私は現在、ロサンゼルスのトーランスエリアとオンラインで子供向けの日本語と英語の語学スクールTLC for Kids LA校を運営しています。広島大学の学校教育学部を卒業後、小学校教諭として公立学校の教育現場に勤めていたり、教育委員会の施設で不登校児童のメンタルケアや学習サポートを行ったりしていた経験もあります。現在アメリカでは1歳半~15歳の生徒さんや保護者の方と日々接しながら、のべ10年以上にわたる教育現場経験や2000人以上のお子さんと関わってきております。このコラムではご家庭でのバイリンガル育児のヒントや英語/日本語教育についてお届けしていきます。アメリカで子育てしている方々が、日々の子育てにおいて「これならできそう、ちょっとやってみよう」というアクションにつながればいいなと願っています。
VOL.14 5歳までに意識しておきたい
セミリンガル/ダブルリミテッド問題
セミリンガル/ダブルリミテッド問題という言葉を聞いたことはありますか?日本語も英語も中途半端で、どんなに努力しても学力が身につきにくい状態のことを指します。
•「海外で暮らす日本人家庭」
•「日本語の読み書きが定着していない子ども」
に多く起こるということを認識しておきましょう。
セミリンガル/ダブルリミテッド問題は言語形成期の子どもが、母語習得が不十分なまま強い外国語環境に置かれることによって起こります。
■5歳からの公教育がターニングポイント
アメリカでは5歳からキンダーガーテンで公教育が始まります。すると毎日最低でも6時間子どもは「英語漬け」になります。アメリカの学校に通えば、耳にする言葉、目にする文字、全て英語です。家に帰ってからも英語の本読みやプリントなどの宿題をこなさなければなりません。さらに友だちと話題を共有するために英語のテレビを見たりや英語のゲームをしたがるかもしれません。アメリカでは子どもが5歳になると強制的に「英語漬け」になるのです。
■5歳までの日本語教育の重要性
私たちは「日本語の文字教育を5歳までに始めてください!」と、皆さんにご提案していますがその理由は上記の通り、5歳になると現地校で英語の文字教育がはじまるからです。
私たちは言葉の力は「文字」を身につけることによって促進されると考えています。本が読めるようになれば、語彙力も表現力も文法力も、読書を通して向上させることができます。会話だけで言葉の力を伸ばして行くことはできないのです。
海外在住でも「日本語の幼稚園に入れてるから大丈夫」と思っていませんか?日本語の幼稚園に入れていても「文字教育」をしていなければ学力には結びつきません。日本語がいくら流暢に話せても文字が不安定な状態で現地校に通い始めるとセミリンガル/ダブルリミテッド問題がチラホラと見え隠れしてくるのです。
■バイリンガル子育ての大原則
それは「両親が言葉の先生である」です。これは海外子育て中の両親の多くが見逃していることなので声を大にして言います。両親が言葉を育てる先生です。海外では両親が日本語を育ててあげなければ、子どもの言葉の発達は必ず遅れます。日本に住んでいれば、子どもが生まれた時に「よーし!がんばって日本語を育てるぞ!」とは思わないでしょう。日本で子育てをしている気分で「放っておいても日本語は育つだろう」という意識のまま子どもに接していると、子どもの言語発達は遅れていきます。海外在住の両親は頭のスイッチを切り替えて「自分が言葉を育てる先生なのだ!」という強い決意を持たなければなりません。発語が遅い、かんしゃくを起こす、意味を成さない言葉ばかり話す、そんなサインがある場合は見逃さないでください。
英語圏で育つ子どもは自然とバイリンガルになると思っている方が多いのですが、バイリンガル育児はそんなに簡単ではありません。海外で子育てをしている方は、くれぐれも「軸となる言葉」の発達に目を向けましょう。