日本の人気番組「はじめてのおつかい」が 英語名「Old Enough!」として世界で配信

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アメリカ101 第131回

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1991年の放送開始以来の日本の人気テレビ長寿番組、日本テレビ系列「はじめてのおつかい」がアメリカの定額制動画配信サービスNetflixを通じて、3月末から英語などの字幕付きで「Old Enough!」というタイトルで、アメリカ国内だけでなく世界各地で配信が始まり、大きな話題となっています。2歳から4歳までの日本各地に住む幼児が、親に頼まれて初めてひとりでおつかいに出掛け、首尾よく言われた品物を買って無事帰ってくるかの一部始終を隠しカメラで収録・編集した番組。アメリカでは、エンタメ専門ジャーナリストで、ソーシャルメディアSNSのインフルエンサーとして活躍しているキャスリン・バンアレンドンクがツイッターを通じてシェアした映像が拡散、ネットや新聞でも取り上げられて、人情味あふれた物語性に富んだリアリティーショーとして「バズって」います。

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日本絡みの映像番組シリーズでアメリカで話題になったといえば、最近では「片付け」コンサルタントとしてアメリカでも成功した、「こんまり」こと近藤麻理恵の「片付けシリーズ」があります。矢継ぎ早にベストセラーを出した勢いで、2019年1月にNetflixを通じて「Tidying Up with Marie Kondo」(邦題「KonMariー人生がときめく片づけの魔法」)というドキュメンタリーシリーズ番組が配信となり、その年のエミー賞2部門でノミネートされて話題となりました。

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今回の「Old Enough!」は、過去19年間の番組の中から選んだ合計20エピソードから構成されており、3月末からNetflixのネットワークを通じて世界150以上の国・地域で、30を超える言語の字幕付きで配信されています。  現在日本では、年2回、冬と夏に3時間の特別番組として放映されていますが、Netflix版では近年のエピソードを編集、全20回の構成です。日本では所ジョージが司会役で、タレントと称するゲストが顔を揃えて、さまざまなコメントを加えながら番組が進行しますが、この海外版では、そのような“水増し”は一切カット。ひとつのエピソードは10分から20分で、番組開始当初からのナレーター、近石真介のナレーションを生かしながら、テンポよく1回の「おつかいストーリー」が完結するので、Binge Watching(一気見)には絶妙な番組とあって、ニューヨーク・タイムズ紙も、当初は毎週金曜日の「週末必見テレビ番組」コラムで初めて紹介していました。

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同紙は、その反響が大きかったからか、4月半ばになって、番組開始以来の「はじめてのおつかい」に関するさまざまな話題を取り上げた東京駐在記者2人を起用した長文の記事を配信するほどでした。  「幼児の一人歩き」や「小学生一人の電車通学」という日本ながらの街頭風景は、日本を訪れる外国人にとっては年来の好奇心の的で、YouTubeを検索すると、それに関するさまざまな映像を目にすることができます。

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「Old Enough!」に描かれている幼児の自立心の強さ、そしてそれを励ます母親の育児方法が、番組放映に伴いネット上でも、さまざまな議論が展開されています。しかし、そのような育て方を可能とする日本の生活環境の素晴らしさを指摘する見方が圧倒的です。そして、エピソードにみられる、日本における地域社会での緊密な住民の連帯感への共感が多くみられます。  インドの大手ウエブサイト「Firstpost」は、そんな日本での心温まる地域社会の一体感や共同体としてのあり方という高い視点からして、「Old Enough!」を通じて世界中が日本から学ぶものがあるとするコメントを掲載しているほどです。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(4/19/2021)

 

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