突然ですが「かまとと」の意味知っていますか。辞書を見ると「知っているのに知らないふりをして、上品ぶったりうぶに見せたりして、世間知らずを装って、男性の気をひこうとする、女性が行う行為。」更に語源の由来は「昔、ある女性が、かまぼこは魚(とと)から出来ているの?とわかりきっていることを知らない素振りで聞いた様子から生まれた言葉。」らしい。
冒頭から長々と「かまとと」を話題にしているが、最近Z世代にかまととソングが注目されている。
先ずは山本リンダ『困っちゃうな』(作詞作曲遠藤実、昭和41年発売)です。
困っちゃうな、デートに誘われてどうしよう、まだまだ早いかしら
嬉しいような、怖いような、ドキドキしちゃう私の胸
ママに聞いたら、何にも言わずに笑っているだけ
困っちゃうな デートに誘われて
まさに完全なるかまととソング。今どき初デートの相談を親に相談するとは思えない。困っちゃうなと言いつつ全然困ってないのが昭和的でいい。
続いてはザ・ピーナツ『振り向かないで』(作詞岩谷時子・作曲宮川泰、昭和37年)だ。
振り向かないで お願いだから
今ね 靴下なおしているのよ あなたが好きな黒い靴下
振り向かないで お願いだから
今ね スカートなおしているのよ あなたの 好きなタータンチェック
これから仲良くデートなの 2人で語るのロマンスを♪
さすが岩谷時子さん、見事な歌詞です。恥ずかしいからこっちを見ないでと言っているくせに、あなたの好きな黒い靴下を堂々と直しながら彼の気持を向かせるなんて、まさに上級かまととに間違いない。
続いて、麻丘めぐみ『芽ばえ』(作詞千家和也・作曲筒美京平、昭和47年)は、
もしもあの日 あなたに逢わなければ
この私どんな 女の子になっていたでしょう 足に豆をこさえて 街から街
行くあてもないのに 泪で歩いて いたでしょう
悪い遊び覚えて いけない子と 人に呼ばれて 泣いたでしょう
今も想い出すたび 胸が痛む もうあなたのそばを 離れないわ♪
正統派かまととソング。あなたに逢わなければ悪い遊び覚え悪い子になっていたでしょうとけなげなのか、したたかなのか、どちらにせよ自己演出は完璧。更に清純派歌手が可憐に歌うので効果絶大。
他にも伊藤咲子『ひまわり娘』、河合奈保子『スマイルフォーミー』、キャンディーズ『あなたに夢中』、林寛子『素敵なラブリーボーイ』など、かまととソング オンパレード。昭和の女の子は何を考えデートしていたかがわかる名曲ばかり。学校では教えてくれない女性行動学の勉強にもなるはず。役に立つかもしれない。一度聴いてみては!
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。