ドジャース大谷翔平(30)が2024年8月23日のレイズ戦で日本人初のサヨナラグランドスラムを放ち、メジャー史上最速で「40本塁打&40盗塁」を達成した。試合後、MVPコールの合唱が響き渡る中でのヒーローインタビューで大谷は「最後に打てて良かった。ドジャースに来てから一番の思い出になっていると思います。」と格別な瞬間に酔いしれた。スタンド総立ちのファンを見つめながら「今日は最後僕は打ちましたけど、そこまでのチャンスを作ってくれる作業が必要なので。そういう人たちのお陰で今日打てたのは自信になりますし、自分の役割を先ずはしっかりやりたい。」何処までも謙虚なのだ。余韻に浸るわけでもなく試合後20分でスタジアムを後にした。大谷は既に明日を見つめている。
今シーズン際立って盗塁の数が増えている。過去最高は2021年の26個、今シーズンは何処まで増やせるのか。隙あらば次の塁を狙う塁上の大谷は、まるで獲物を狙う豹のようだ。プレー中一瞬たりとも気を抜かない。これって本当に凄いこと。日本のプロ野球を見ると、ホームランバッターにはその役割があって、走りは走塁のスペシャリストに任せる傾向がある。オフのトレーニングも、ホームランを打つための肉体作りに専念する。チーム、監督はホームランバッターに怪我をされては困るので盗塁の指示を出さない。これは高校野球、大学野球でも同じではないか。ましてエースで4番なら尚更。それが野球の常識だと思っていたのに、大谷が覆してくれた。
「現役メジャーリーグで最もレジェンドな選手は誰か」の最強論争になると必ず2人の名前が出てくる。先ずはニューヨーク・ヤンキース、アーロン・ジャッジ選手。今シーズン2度目の60本塁打に挑む球史に残るスーパースターだ。ジャッジ選手のホームランを打つ能力、外野手としての守備能力、ランナーを刺す矢のような確実な返球は、メジャーリーグの過去を探しても例を見ない。もう1人はもちろん大谷選手。今シーズンはリハビリのため投手としては出場していないが、その実績には目を見張る。かつて投打で活躍した選手と言えば、最初にアメリカ野球殿堂入りした伝説のベーブ・ルースしかいない。大谷選手の優位な点は走塁ではないか。打って、投げて、走って、野球選手としてそれがどんなに凄い事かは大谷が立証している。「どちらが偉大な選手なのか?」はメジャーリーグファンにとって最もホットな話題では。
しかし論争の結論は未だ決める段階ではないかも知れない。楽しみは後にして、今は大谷の「50&50」の達成を応援しないと!
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。