大相撲110年ぶり 尊富士初優勝

 幕尻の尊富士(たけるふじ)が春場所を13勝2敗で、1914年の両国場所以来110年ぶりとなる新入幕優勝を果たした。初土俵から10場所目の優勝は史上最速。14日目に負傷した右足外側の靭帯が腫れたままの状態で、千秋楽の大一番、豪ノ山を押し出し勝ちを制した。前日車椅子で控えに戻る姿を見ている観客は誰しも休業すると思っていた。本人も一度は土俵に上がるのを断念したが、宿舎に戻り同じ青森県出身の師匠伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)から「お前なら出来る」と励まされ「出なければ一生悔いが残る」と強い気持ちで再び土俵に上がった。初優勝を果たし、更に殊勲、敢闘、技能の三賞を独占しトリプル受賞となった。

 尊富士の経歴を見てみよう。現在24歳。日本大学を経て2022年秋場所で初土俵を踏む。新十両だった24年の初場所で優勝し十両を1場所で通過。初土俵から9場所での入幕は最速スピード記録。今回の優勝は連日テレビや新聞を賑わせている。大相撲でこんな明るい話題はいつ以来だろう。正直言って最近の大相撲は人気が低迷していた。春場所が開催されている事すらZ世代にはあまり知られていなかった。しかし今日からは違う。多くの国民が夏場所を楽しみにし出したのでは。

 当然ながら相撲は一人では取れない。ライバルがいてこそ盛り上がる。時代を振り返ると「栃錦・若乃花」「柏戸・大鵬」「貴乃花・曙」「白鵬・朝青龍」というように、いつもライバルとの死闘が観客を虜にした。尊富士にライバルはいるのか?居ました。二所ノ関部屋、日本体育大学出身、23歳身長193cm、2場所連続11勝の大の里です。最も将来の横綱に近い男と言われている力士だ。

 そうなんです、彗星のごとく現れた尊富士の最強のライバルは大の里。春場所の千秋楽で尊富士が負けていれば二人の間で優勝決定戦があったのでは。10日目の対戦で尊富士に負けた悔しさがある大の里の来場所の巻き返しはあるのか。脇役に回った屈辱の上位力士も黙っていない、意地を見せられるのか。尊富士自身も優勝をフロックと思われたくないはず。稽古に熱が入るに決まっているが、心配なのは怪我。日本中から注目を浴びているが、自分のペースで調整して欲しい。

 私は、何故か東北出身の力士が活躍すると嬉しくなってくる。出身地の青森県五所川原市は大変な騒ぎらしい。春場所で五所川原に満開の花を咲かせてくれた。尊富士の戦いは始まったばかりだ。夏の隅田川やぐら太鼓が響く中、5月の両国国技館「大相撲夏場所」でも大輪の花を咲かせてくれ。「尊・大 時代」がやってくる!

 

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■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

 

 

 

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