昭和の恋人たちのデート事情

 TBSラジオ『テリー伊藤の昭和モーレツ天国』(土曜午後3時)がスタートして以来、何故か昭和の出来事ばかり考えている。あの時代、恋人たちは何を考えどんな付き合い方をしていたのか?

 先ずは、親と一緒に暮らしている彼女と連絡をとるのが至難の業だった。当然携帯電話がある訳もなく、事前に何時に連絡すると約束しておかないと大変な事に。電話が一家に一台の時代、時間を間違えると親が出てしまい「君は娘とどういう関係なのだ、君は何者なのだ。」と言及される恐ろしい事態に。長電話も禁物。中には彼と話したくて電話線を自室まで5メート伸ばす強者もいた。デートが決まって待ち合わせがこれまたひと苦労。遅れると連絡取れず悲惨な事に。駅には誰でも使用できる伝言板があるのだが、最悪は「輝夫君先に帰る、さよなら」と別れを告げられる。個人情報も何もない凄い時代なのだ。

 昭和のアツアツカップルは今では余り見かけないペアルックで街を闊歩していた。さらにハート型のペンダントに相手の写真を入れて愛を誓いあっていた。さすがに恥ずかしくて出来なかったが、今思えばやっておけば話のネタになったと後悔している。デートプランも、今なら食べログでお店のお勧め情報や空き状況が簡単にチェック出来るが、当時レストラン情報は雑誌が主で、気の利いたお店は行ってみると一杯という事も。クリスマスシーズンは予約しないで街に繰り出すと、行く先々のお店で断られクリスマス難民と化す始末。街を彷徨うカップルが続出し、最後は行きつけのラーメン屋に入る悲しい結末に。これで別れたカップルを知っている。勘定は、今なら「今日は割り勘で行こう」と気軽に言えそうだが、あの時代デートで割り勘は少なかったのでは。男性が無理して払っていた。中には優しい娘がいてテーブルの下からそっとお金を渡してくれたことを覚えている。

 当時大流行したのが自分で作る「お気に入りカセットテープ」だ。車でのデートでは、彼女が作ってきたマイカセットで音楽のセンスや実力を見るチャンスなのだが、趣味が合わないと最悪になる時も。打ち込み音楽が出始めの頃、2時間全てそんな曲を聞かされ頭が痛くなった事があった。車を持っていないカップルはキスひとつするのも大変だった。昭和純情時代のキスの定番は公園なのだが、土曜日のベンチは既に満席、とりとめのない会話をしているのだが心ここにあらず。きっかけも掴めないままキスはお預けとなり悶々とした気持ちで帰路へ。昭和の恋人たちはこんな経験をしていたのだ。

 今振り返ると甘く切ない良い時代でした。毎週そんな昭和話をしています。機会があれば是非ラジオ聴いて下さい!幸せ気分なれますよ。

 

 

 

■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

 

 

 

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